泣けるビジネス本『破天荒フェニックス』で、経営とは何か考える(参考書籍:破天荒フェニックス オンデーズ再生物語)

 泣けるビジネス本

「破天荒フェニックス」という本がめちゃくちゃ面白いです。

オンデーズの社長である田中さんが執筆されている事実に基づくフィクションで、大筋としては、倒産すると言われたメガネ屋を買収し、度重なる資金ショートに悪戦苦闘しながらも、様々なチャレンジを通してなんとか乗り越えていくというストーリー。

僕はなんとなくSNSの口コミで評判が良さそう&取っつきやすそうだったので気軽に読み始めたのですが、ものすごい本でした。

・どんな立場の人でも楽しめるダイナミックなストーリー展開

・会話ベースで進む圧倒的読みやすさ

・経営者に必要なマインドセットが鏤められている

・ベンチャー企業にあるドタバタ意思決定のハラハラ感

・人情味のある社長の思いに泣ける

その熱さを熱く振り返りたいところなんですが、このブログを読んでいただく方も、そして僕自身も原本を読んだ方が120倍良いと思うので、ここではビジネスに活かせる点としての学びをメモしておきたいと思います。

 

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9つのエッセンス

1.普通の社員を想像し、理解する

実行者である社員のことを想像し、社員だったらどう思うか、どんなことだったら実行できるかを理解することが大事。これは経営者であろうが、同じこと。

いきなり「この会社を再生させるために、あと20億円の売り上げをあげましょう」って言われたって金額がでかすぎて、みんな思考停止になるだけだから。

ー確かに「いまの時間、あともう1本だけ売れる方法を考えよう!」だったらなんだか簡単にできそうな気がします。(p50)

2.現場の一次情報を拾い、意思決定に反映する

社長はオンデーズ買収直後の打ち手の立案の際に、まず全国の店舗を回って店舗見学と社員と会食を実施。それをもとに、その後の経営ポリシーを設定している。

会社が生き残るためにスタッフを大量にリストラして解雇するのは、いまのオンデーズでは絶対に悪手だ。全国のお店を見て回ってわかったけど、俺たちのメガネ屋っていう商売は「人」の要素が半分以上を占めているんだ。(p71)

3.消費者を理解し、ボトルネックに打ち手を打つ

マーケ的な話。当たり前だけど消費者理解も大前提。

消費者にとっては「知らない=不安」であり、安心や信用が大きく売り上げを左右するメガネ商売において、知名度不足は相当なハンディキャップであった。(p164)

4.学びを得て経営をアップデートする

東日本大震災でのボランティアを通じた学び。この学びを素直に受け止め、経営に反映する。この意思決定の潔さと、スピード感に感銘。

オンデーズがお客様に本当に売らなければいけないのは、安いメガネでもおしゃれなメガネでもなく「メガネをかけて見えるようになった素晴らしい世界」だったのだ。(p217)

5.なぜうまく行ったのか?を理解する

戦略や施策の成果を、それで終わりではなく現場の生の情報を得ながらきちんと理解しておく。未来に変わりうる戦略の中でも、大事な要素を変えてしまわないために。

いままで重くスタッフにのしかかっていたアップセルへのセールストークの重圧が消し去られたことで、スタッフたちは皆んな、生き生き輝き始め、店舗の空気も一段と明るくなり、新料金体系へと移行した店舗から順に、次々と目に見えて客数が増え、販売本数も伸びていった。(p260)

6.競合を意識した手を打つ

業界内での秀逸な一手を打つ時は、パクられないようorパクられるスピードが遅くなるように、一見して非合理な手を打つ。

その厳しい国家資格制度があったからこそ、シンガポールのメガネ業界は厳しい競争に晒されず、半ば既得権益化していたんじゃないんですかね?その資格制度をクリアして、「OWNDAYS」が成功することができれば、逆にそのハードルが今度は僕らを守る壁になると思います。(p327)

7.自分の立場と影響力をわきまえる

経営者だろうが、リーダーだろうが、メンバーだろうが、自分の立場の構造上の問題を理解しておく。辛い時に感情的にならなくて済むかも。

経営者という職業は、社内の様々な声に耳を傾けながら慎重に調整しつつ、ゆっくりと物事をすすめていけば、「決断力・リーダーシップがない」と言われ、いうことを聞かずにどんどん進めていけば「独裁でワンマン経営だ」とどっちに転んでも批判される。(p353)

8.直感を信じる

難しい意思決定やトレードオフが生じる意思決定の場合、直感を信じて突き進む勇気を持つ。

次の瞬間、何者かが僕の脳裏で「行けっ!」と囁いた気がした。それはひょっとして天国にいる父親だったかもしれない。時に人は、「天命」のような自分の進む道を告げる「声」を聞くことがある。 (p390)

9.成果にコミットする

成果を出すことにこだわる。成果を出すことで成長する。それこそが自分やチームを救う最良な手段。

お客様で溢れかえる店内を見て、寝癖をつけたままの民谷が大粒の涙と鼻水を流していた。僕はそれを見て、仕事の苦しみは成長によって洗い流すしかないのだと実感した。(p493)

 

コミットを求めるのではなく、信じる

本書は「資金ショート」という最も避けたい現実と隣り合わせにあり、「成果を出すこと=生き残る条件」なので、コミットが大事だよね、とゆうちょうなこと言っている場合ではなく、乗り越えなければならない現実です。

だからこそ頭をめちゃくちゃ使うと思うし、あらゆる打ち手を思考する。これは実態のビジネスでは意外とできないと思います。特に、規模化した組織ではそれを文化として根差すのも難しい。

本書のオンデーズさんでももしかしたら最初は社長をとりまく一部の社員のコミットだったかもしれないですが、それが全社的に拡散している印象を受けました。これはやはり数々の挑戦に、多くのメンバーを信じて任せるというスタンスがあったからこそ。やはり一部のメンバーだけのコミットでは限界があると思うのです。

もちろん、そうせざるを得なかった環境もあったかと思いますが、実際にさまざまな場面でメンバーを抜擢して実行している。この点が読んでいて気持ちよかったし、泣けた理由でもあります。

 

現実では、社員のコミットレベルの差異がありすぎて、腹が立つこともあります。でもそうではなく、まずは自分が矢面にたって実行し、成功事例を創出する。そしてメンバーを巻き込んで、信じて任せることで全体のコミットを強めていく。これを少しずつ積み上げることで、本書のような感動を呼ぶような仕事、そして自分自身が感動できる仕事を実現できるのでは、と思います。

 

破天荒フェニックス オンデーズ再生物語  (NewsPicks Book)

破天荒フェニックス オンデーズ再生物語 (NewsPicks Book)

 

 

次に読む時は多分、ピックアップする箇所が変わっていると思います。そのくらい、いろんな観点や思いが詰まっている素晴らしい書籍だと思います。(完)