転職・キャリアを考える上で読んでおきたい本10選(後編)

さて、前編ではキャリアを考える上で示唆が多い、キャリア論について主軸で書かれている本を紹介しました。後編では、キャリアのことを主題で書いているわけではないけど、キャリアを思考する上で金言が書かれている本を紹介したいと思います。

 

キャリアを思考する上で刺激になる本

どんな業界でも記録的な成果を出す人の仕事力

どんな業界でも記録的な成果を出す人の仕事力

  • 作者:伊藤 嘉明
  • 発売日: 2015/08/21
  • メディア: 単行本
 
  • 社長になるには、マーケティング、営業、オペレーションを経験する必要がある
  • どれだけリサーチや議論を積み重ねても、自分は「欲しい」「わくわくする」と思わない商品を作るべきではない

 

フロー体験 喜びの現象学 (SEKAISHISO SEMINAR)

フロー体験 喜びの現象学 (SEKAISHISO SEMINAR)

 
  • *フロー:1つの活動に深く没入しているので、他の何ものも問題にならなくなる状態。その経験それ自体が非常に楽しいので、純粋にそれをするということのために多くの時間や労力を費やすような状態
  • 幸福の探求に関する限り、部分的な解決は無効である
  • 人類が一挙に物質的な力を1000倍に増やしたにもかかわらず、経験の内容を向上させることについてははるかに立ち遅れている(から、生活に希望を持てないように思える)
  • 徐々に自分を社会的報酬から解放し、それを自分自身の支配下にある報酬に置き換えることによて解放は得られる
  • 人は同じことを同じ水準で長時間行うことを楽しむことはできない。我々は退屈か不満を募らせ、再び楽しもうとする欲望が能力を進展させるか、その能力を用いる新たな機会を見出すよう自分を駆り立てるのである
  • フローを体験する上での次の障害は、遺伝的障害ほど大きはないが、自意識の過剰である
  • トーマス・カーライル「自分の仕事を見出したものは幸いである。それ以外の祝福を求めてはならない」
  • 仕事における3つの不満①変化と挑戦の欠如②他者、特に上司との摩擦③もえつき(ストレス)

 

  • 人を奮い立たせるような挑戦しがいのある「良いアジェンダ(課題)」を設定するリーダーのもとでは、成長につながる「良い経験」が得られる一方で、なんの意義・意味も感じられないようなアジェンダしか設定できない三流のものとでは、成長につながる良質な経験は得られず、スキルや人格の成長は停滞することになります。つまり、「凡人」のもとでは、「凡人」しか育たないということです。
  • 社会で実験を握っている権力者に圧力をかけるとき、そのやり方には大きく「オピニオン」と「エグジット」の二つがあります。
  • (なぜオピニオンとエグジットを活用できないのか)1つめが、「美意識の欠如」です。自分なりの美意識、つまり審美眼、道徳観、世界観、歴史観を持っている人は、明確な「許容できる、できない」という一線を持っているものです。
  • (2つめがモビリティ)「モビリティが高い」ということは、場所によって自分の正味現在価値が変わらないということであり、「モビテリティが低い」ということは、スキルや知識の文脈依存度が高く、場所によって大きく自分の正味現在価値が変わってしまうということです。
  • トラストがなければ、どんなに頭脳名声なビジョナリーであっても、組織を率いることはできない、と。(中略)だからこそリーダーには人望が求められるわけですが、権力格差の大きい国では、たとえ人望がなかったとしても、組織で上のポジションにあれば、権力を発揮して人を付き従わせることできます。
  • 問われるのは、「あなた個人はどのようにして組織に貢献するのですか」ということであり、単に年を食っている、経験年数が長いということだけでは、ドヤ顔のできない時代がやってきつつある、ということでしょう。
  • サーバントリーダーシップのエッセンスは「支援」です。リーダーシップを発揮してイニシアチブを取ろうとしている若手・中堅に対して、オッサンならではの人脈・金脈・ポジションパワーを持ち出して、この若手・中堅を「支援する」というのがサーバントリーダーシップの、まずは「わかりやすいカタチ」です。
  • 人材を育成できなていないということは、「良い業務経験」を積ませてあげられていない。ということです。
  • 「チャレンジ」には「時間や能力の集中」という要素がつきものであり、したがって「それまでにやっていたことを一旦止める」といいうことが必然的に求められます。
  • なんども繰り返して失敗すれば「こういうときはやばい」という失敗の勘所がつきます。この勘所をセカンドステージでつかむことが重要なのです。
  • どこでも生きられる、誰とでも働けるという自信が、オピニオンとエグジットの活用へとつながり、これが権力をけん制する圧力ともなります。

 

  • 重要なのは、「人々が自分に対して持っている、自分に都合のいい思考の錯覚」は、一種の資産として機能するということだ。これを「錯覚資産」と呼ぶ
  • 結果として、数年後には、実力においても、錯覚力タイプが、実力タイプを追い抜いているのだ
  • 錯覚資産を持たない人間には、発言の機会さえ与えられないのが、世の中というものなんだ
  • あなたがハロー効果に汚染された直感で誤った判断をしたとしても、組織の上から下まで、みんな同じ過ちをやっているので、あなただけ特別不利になることはない
  • あなたは、あなたの人生の経営判断を、是が非でも間違えるわけにはいかない。だから、自分の人生の選択をするときだけは、徹底的に思考の錯覚の汚染を除去して、研ぎ澄まされた直感と論理的思考で、ほんんとうに正しい判断をしなければならないのだ。
  • よく「失敗は成功の母」などと言われるが、実際には、成功の方がはるかに成功の母
  • 錯覚資産を手に入れるには、成功する必要があるよね?▶︎まずはいろんなことに小さく賭ける。チャレンジして成功するかどうかなんて、運次第だから、たくさんチャレンジするしかない。
  • ほとんどの人は、本当の実力など、わかりはしない。1時間や2時間の面接で、実力がわかるなどと思うのは、かなりの部分、思考の錯覚だ。ほとんどの人は、本当の実力ではなく、思考の錯覚で人を判断する。
  • 才能があるかないかなんて、自分にも他人にも、そうそう見分けはつかない。(中略)未来のヒットが、過去にさかのぼって、現在のあたなの才能のあるなしを書き換えるのだ。
  • コントロールしたいから、コントロールしているのだ。コントロール欲求は、食欲や、性欲や、睡眠欲と同じくらい。基本的な欲求なのだ。(中略)しかし、もし成功が、単なる偶然によるものだとしたら、あなたは「コントロール」できなくなる。それはあなたにとって、大変な苦痛だ。あなたの健康は阻害され、やる気をなくし、不幸になって行動しなくなってしまう
  • 誰がどう見ても無能、もしくは誰がどう見ても明らかに有能でもない限り、実力という要素の影響力を、自分が思っているものの半分くらいに見積もった方がいい。
  • 判断が難しい時、人間は考えるのを放棄して、直感に従ってしまう。しかし、判断が難し時こそ直感はアテにならない。なぜなら、判断が難しい時に直感が出す答えは、思考の錯覚に汚染されていることが多いからだ。だから、判断が難しい時は、「思考のねばり強さ」が決定的に重要になる。「思考のねばり強さ」がない人間が、難しい問題について考えん抜くのを放棄して、思考の錯覚の泥沼に沈んでいくのだ。判断が難しくても、不確実性が大きくても、安易に思考を放棄してデフォルト値を選んでしまうことなく、粘り強く考え抜かなければならない。
  • 成果をアピールするスキルが高く、アピールする努力を十分にやっている場合、それはより大きな錯覚資産になる。単にやみくもにアピールするだけじゃなくて、ディシジョンメーカーへの印象付けをうまくやることが重要だ。
  • 自分の優秀さをアピールするより、自分がどういうポジションなら力を発揮できるかの、具体的なイメージを相手にインプットする方がいい。できるだけ多くの人が、自分のことを「思い浮かびやすく」しておくと、意外なところから意外なチャンスが降ってくることがある。
  • CVRが低い人は、PVを増やすことを嫌がる傾向にあるということだ。(中略)ある程度の実力が身についたら、まだCVRが低くてもじゃんじゃんPVを増やしてしまう戦略の方が、結局効率がいい。CVRが10分の1でも、PVが10倍なら、コンバージョン数は同じだからだ。だから、実際には、「まだ実力が低いくせに、あちこち自分を売り込むような恥ずかしい奴」とバカにするような人間の方がバカなのだ。最後に笑うのは、そういう一見バカにみえる恥さらしな行動をした人間なのだから
  • くれぐれも、強い、美しい、豊か、健康、賢い、などの現実世界におけるプラスの価値自体を、自分の脳内で否定したりしないように、注意深く自分の無意識を見張る。
  • 大きな錯覚資産を手に入れたいなら、「一貫して偏ったストーリー」を語らなければならない。「シンプルでわかりやすいこと」を、それが真実であるかのように言い切ってしまえ。本当は断定できないことを、断定してしまえ。

 

メモの魔力 -The Magic of Memos- (NewsPicks Book)

メモの魔力 -The Magic of Memos- (NewsPicks Book)

  • 作者:前田裕二
  • 発売日: 2018/12/24
  • メディア: Kindle版
 
  • その人自身に切羽詰まった問題意識、すなわち転用すべき他の具体的課題がないと、単なるゲームで終わってしまう(中略)「とくべき課題の明確化」は、抽象化の前段階において、ビジネスパーソンがまず向き合わねばならない問題かもしれません。
  • こんな情報があふれて混沌としている時代において、迷っていない人は最強です。お金のあるなしに関係なく、やりたいことが明確な人が一番幸せだと思っています
  • 「これは自分にとって不変の価値観だ」と感じられるような、自分を一本貫くような人生の軸を一度見つけられたら、それは生涯変わらない可能性が高い。その軸を前提にした問いを立て続けることもできる。

 

以上、僕がキャリアを思考する上で影響を受けた本10冊を紹介いたしました。こうした本は、日々の自分の変化に合わせて振り返って読んでみると、気づくポイントや思考のきっかけになる部分が変わったりするので、どんなことが主張されている本だっけ?を理解しておくと、いざ思考を深めたくなったときに捗りますよね。みなさんもおすすめの本があれば教えていただきたいです!(完) 

転職・キャリアを考える上で読んでおきたい本10選(前編)

転職を思考することは非日常ではなくなり、むしろビジネスマンとして日常の中にあるべきだとすら考えられる時代になりました。終身雇用の終焉や大企業の倒産リスクなどを筆頭に、一つの会社で勤め上げるというのは神話であることを誰もがなんとなく自覚し、いざ市場の中に放り投げられると自分という個にはどんな価値があるのか?という問いに向き合い続ける必要があります。

なので、仮に現職に満足していても、キャリアを描く上では転職、つまり現職以外の選択肢を思考することは特別なことではありません。実際に、そうした思考態度を推奨する本もいくつも見られます。

今回は、これまで僕が読んできた本でキャリアに関して影響を受けた本を10冊選んでまとめたいと思います。キャリアに関することが主題ではない本も取り入れてますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

※前編でキャリア論ど真ん中系、後編で別テーマでキャリア論に触れている系を紹介します。

 

キャリア論ど真ん中系 

  • 自分の動機とマッチングがより高く、したがってごく自然に自分のコンピテンシーをより発揮して仕事ができる人ほど幸せになる
  • 動機は個人の意志や努力で変えることがかなり難しい
  • マイナー部門や会社でも初めて取り組む新しい部門などの方が実績を出すにははるかに有利だ
  • 2番目に得意なことを仕事にすべきだ、そうすれば自分の一番得意なことが、その触手のなかでも差別性・希少性になるから
  • 人材輩出企業=優秀な人材を数多く生み出し、しかもそこで育った人材が自立的なキャリアを求めて、どんどん外に出て行って活躍し、その会社のイメージを高め、ますますいい人材が集まるような会社

 

 

  • 労力のわりに周りが認めてくれることがきっとあたなに向いていること、それが自分の強みを見つけるわかりやすい方法だ
  • 一見非効率に見える人間の「好き」を突き詰めてその「好き」に共感する人が「ありがとう」とお金をはらってくれる「偏愛・嗜好性の循環」こそがのこっていくということ

 

  • 無形資産①生産性資産(スキル・知識)②活力資産(健康、友人関係、パートナー、家族)③変身資産(自己認識、人的ネットワーク、新しい経験へのオープンな姿勢)
  • 重要なのは、小規模な仕事仲間のネットワーク、それも相互の信頼で結ばれた強力なネットワーク
  • 組織は個人か自己の目標を追求する場ないし、手段と位置付けられるようになった
  • 新しい人的ネットワークを築けば、古い友達の一部と疎遠になることはさけられない
  • 長い年数働く時代に活力を維持するために、週休3日の勤務体系が強力な選択肢となる可能性もある
  • 新しい知識に投資するためには週に1日ではなく、もっと集中的に取り組む期間が不可欠なのだ
  • スキルを更新し、新しい試練に挑み、新しい人的ネットワークに投資することは、パートナーとの緊密な協力関係があれば、格段に実行しやすくなる
  • 無形の資産をマネジメントするためにそのような実験の期間を経験する人が増えれば、企業は履歴書の空白期間にもっと寛容にならざるを得なくなる

 

 

組織にいながら、自由に働く。

組織にいながら、自由に働く。

  • 作者:仲山進也
  • 発売日: 2018/06/29
  • メディア: Kindle版
 
  • 「やらなければいけない仕事」と「楽しむこと」は別のものと割り切ってしまうと仕事が楽しいという状態への道が閉ざされてしまいます
  • 仕事を楽しくするためにはまず目の前の仕事をするにあたって「好みではない作業を減らす」ことと「好みの作業を増やすこと」がキモ=プロセス目的的(フロー体験でいう自己目的的)
  • 私は「今日の業績は2年前の仕事の成果」と考えるようにしています
  • 素人目線の賞味期限はおそらく半年ほど
  • トラリーマン:①レールから外れた経験のような「痛み」を伴う転換点があること②突出した結果をだしていること(顧客の中に熱狂的なファンがいるなど)③経営層に理解者がいること
  • 目指す境地は、「自分が関わる人たちはなぜかうまくいくけれど、たまごちをもらうことはない」という何もしてない風のプレースタイル

 

 

  • 人的資産は正直、20代は大した価値にならない。だが、年を取り、40代以降になるときわめて重要になる。
  • 伸びるマーケットを見つける2つの方法は①複数のベンチャーが参入し、各社が伸びているサービスに注目する、②既存業界の非効率を突くロジックに着目する
  • 特別な才能を持たないほとんどの人間にとって、重要なのはどの場所にいるか。つまりポジショニングなんだ。そしてポジショニングは誰にでも平等だ。なぜなら「思考法」で解決できるからな。
  • 「働きやすさ」はきわめて重要だが、マーケットバリューと相反するものではない。むしろ長期的には、一致することが多い。マーケットバリューが高い人が集まる会社のほうが、長い目で見ると働きやすい。
  • 会社には強みとなる「エンジン」がある。いちばんパワーを持っている部署や組織はどこか。エンジンと自分の触手が一致しているほうが、裁量権は持ちやすい。経営陣や主要メンバーのバックグランドを見ろ。大企業であれば、どの部門出身の人が出世しているのか。ベンチャーであれば、経営陣はどんな会社出身の人が多いのか。その割合がほぼそのまま、エンジンと対応していることが大半だ。
  • マーケットバリューと給料は長期的には必ず一致する。すでに給料が高い成熟企業と、今の給料は低いけど今後自分のマーケットバリューが高まる会社とで悩むことがあれば、迷わず後者を取れ。
  • 他人にまでやりがいを押し付けるな。すべての人がやりがいを追い求めなければいけないわけではない。
  • 人間には2パターンいる。そして君のような人間には、心から楽しめることなんて必要ないと言っているんだ。むしろ必要なのは、心から楽しめる「状態」なんだ。
  • to doに重きをおく:何をするか、で物事を考える。明確な夢や目標を持っている。1%
  • being に重きをおく:どんな人でありたいか、どんな状態でありたいかを重視する。99%
  • これからの時代にどんなややつが強いかわかるか?それは個人として「ラベル」を持っているやつだ。

急にやってきたリモートマネジメントについて考える(参考書籍:成長企業はなぜ、OKRを使うのか?)

日本が、いや全世界が準備する期間もなく大リモートワーク時代の幕が開けた今、在宅で途方にくれているマネージャーが多いのではないでしょうか?

僕自身も例外ではなく、やはり従来の方法ではかなわいことをこの1ヶ月で強く認識し、改めてマネージャーの役割を見直してます。その一つとして、「目標設定」の在り方あれこれ考えてます。目標設定の仕方は1年をとうして影響を与える大きな要素であり、かつこの時期だからこそしっかり考えたいテーマです。

 

KPIとOKR

従来、目標設定の手法として日本の企業で多く取り入れられているのが「KPI」があります。ビジネスをやっていて聞いたことがない人は少ないかと思います。一方で、最近では「OKR」という概念が広まってきました。

KPIとは本来到達したいゴールに向けて明らかに相関性のある指標を目標として設定する方法です。定量的な指標が置かれることが特徴です。また、その数字自体が賞与などの評価制度と一体であることが多く、たいていはこの数字を追いかけるのが各メンバーの主な仕事になります。

これに対してOKRはobject と Key result で構成され、実現する姿を明確にし(object )、その姿を実現できている状態とはどういう状態か(Key result)ということを具体的にして設定する目標設計のことを言います。KPIと比較したときは、より定性的な要素が重視されることと、定量的な目標は各メンバーごとだったり、組織ごとに柔軟に設定されることが特徴です。

『成長企業はなぜ、OKRを使うのか?』では下記のように説明されておりました。

 最大の違いは、その目的です。KPIでは何よりも目標に対する達成状況を測定・把握して人を管理します。これに対して、OKRの目的は、組織やチームの目標に向けてメンバー各自が自発的に目標を立てて、具体的なアクションを起こすことです。

 

OKRには1on1で対応する

OKRのことを勉強し始めて間もないですが、どうやらポイントは下記の3点にありそうです。

1)目的が第一で、そのために必要な定量目標はいつでも修正してよい

2)故に、トップダウンではなくボトムアップ型の方法論

3)かつ、それをオープンの場で行うことで共有性が高い

こうしたメンバーの自発的な行動設計を前提とした取り組みについては、メンバーの素養やモチベーションが大きく影響するかと思います。つまり、成長意欲が強く自発性の強いメンバーからしたら歓迎される設計で(かくありたいものですが)、そうではない/そのレベルに至っていないメンバーからすると、抽象度が高すぎてもっと具体的な数値目標があったほうが「楽」ということになります。

そう考えるとKPIを土台とした目標設計でもOKR的なアレンジが可能ではないでしょうか。トップダウンでおろされた目標を再度メンバー側でその背景や数値ロジックを捉え直す。そうすることで、自分の数値が事業に対してどのような役割を担っているかを正しく理解し、そのつながりを定期的に確認する作業を実施する。具体的な数値目標がOKRでいうところのOの部分として捉え直すということになります。

個人的にはKPIなのか?OKRでなのか?ということではなく、メンバーとマネジャーの間でこのような「視座の違い」で起こりがちな問題を解消する努力をし続けることのほうが大事かと思います。マネジャー側はメンバーが盲目的に数字を追いかけるだけではなく、そのさきのつながりを意識して活動できているかを常に問いかける姿勢が大事です。一方で、メンバーは具体的な数値目標を追いかけつつも、そのさきのつながりに疑問を覚えたのなら、目標自体の見直しをマネジャーに相談する姿勢が求められます。

そこで、このあたりの柔軟性を担保するのに必要なのが1on1の運用です。週1回などの高頻度で運用することが肝です。注意しなければならないのは、アジェンダを足元の進捗を確認する機会に偏りがちだというポイントです。そうなると、上記のような目標を見直すような機会は得られにくくなります。そうではなく、あえて足元の進捗を劣後させてもう少し抽象度の高いところをアジェンダにする必要があります。

1on1ではこうしたアジェンダの設定が非常に重要になるので、特にリモートワーク下では30分×2回/週の方法を取り出している企業も増えているようです。週に2回運用するということですから、1回は進捗用に、1回はOKRやキャリアについての話をするということを決めておくといいかもしれません。(完)

 

◆取り上げた書籍

 ◆参考にした書籍

具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ

具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ

  • 作者:細谷 功
  • 発売日: 2014/11/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

オーディオブックを活用するための3つの目的【Audible活用法】

オーディオブックの活用方法

子育てをするようになってから、読書をする時間が余るほどあった過去がいかに贅沢であったかを痛感します。子育てをしてなくても、日常の中に読書時間を見出すのは案外と難しいことです。

そこで、すきま時間をうまく利用して読書時間を確保するのにオーディオブックという選択肢をうまく取り入れたいところです。しかし、オーディオブックを利用し始めてから約1年くらい立ちますが、それなりにデメリットも多くあります。

今回はそのデメリットを踏まえた上で、オーディオブックをどう活用すべきかという点を整理してみたいと思います。

 

※利用しているオーディオブック(Audible)

Audible (オーディブル) - 本を聴くAmazonのサービス

Audible (オーディブル) - 本を聴くAmazonのサービス

  • 発売日: 2020/03/14
  • メディア: アプリ
 

 

オーディオブックのデメリット

まず、1年ほど使ってみて感じたオーディオブックのデメリットは次の通りです。

①ストーリーの連続性を担保するのが難しい

②読み飛ばしができない

③重要な箇所を丁寧に読めない

それぞれ簡単に説明していきます。

 

①ストーリーの連続性を担保するのが難しい

僕がオーディオブックを通して読む書籍は主にビジネス本ですが、小説にしろビジネス本にしろ、読書には一貫性を理解することは欠かせません。前に書いてあることを忘れてしまうと、正しく文脈を理解できないからです。紙の本については、この点で利点があります。まず、目次を簡単に振り返ることができます。目次は優れたシステムで、これを振り返るだけで文脈が理解できる場合がほとんどです。

しかしオーディオですと、これが簡単ではありません。更に、目次では振り返りきれなかった内容についてはもう一度聞き直すということが必要になりますので、能率が悪いです。

 

②読むスピードに抑揚がつけられない

また、それとは逆に、すでに既知の内容だったり、読まなくても理解できる部分についての読み飛ばしができないことも読書家にとってはデメリットになります。小説に関してはこの観点はないかと思いますがビジネス本に関してはこれは思いの外大きい要素になります。

ビジネス本に多い構造として、例えば下記のような構造があります。

A)著者の主張+それを裏付けるエピソード

B)著者の主張+それを裏付けるデータ+データの詳細

Aのエピソード部分に関しては特に欧米の書籍については蛇足的に長いことがしばしばあります。Bについてもその該当するデータを既に知っている場合は、読む作業を割愛できます。僕はこれが速読の正体だと思っているのですが、オーディオブックですと、どこまで飛ばしていいかわからないので、結果的にすべてを聴くことになる。

紙の本だと2時間で読める本も、4時間かけて読まなければならない、ということが有り得ます。

 

③重要な箇所を丁寧に読めない

それとは逆に、ちょっとゆっくり理解したいな・・という部分についても同じスピードで通りすぎることになります。時間をかけて読みたい内容には、「理解するのに時間がかかる」「理解した上で考え事につながるため時間がかかる」の2種類があります。どちらも大事ですが、個人的には読書には後者を期待している部分があり、自分自身の思考を熟成させるという作業はないがしろにしたくないなとい思います。しかしながら、オーディオは無情にも同じスピードで駆け抜けていきますので、熟成させるまもなく次の内容の理解を急かしていきます。

 

オーディオブックを活用するための3つの目的

では、どのようにオーディオブックと付き合えばいいかというと、今のところは次のような目的で利用するのがいいかなと思っています。

【オーディオブックの利用方法】

①一度読んだ本の読み返し

②積ん読してある本の先行読み

③紙の本を読むまでもないけどちょっと気になる本(ベストセラーとか)

 

これまで見てきたとおり、本命の本をオーディオブックで聴くのはあまりおすすめできません。本を読む動機というのは大事にしたほうが良いと思っていて、少しでも味見してしまうとその動機が減ってしまいます。本命の本は、最初に持つ「読みたい・・」という思いそのままのエネルギーで手を付けたいと考えています。

そうなるとそれ以外の本、ということになりますが、それが先にあげた3つの種類になります。

①に関しては、何度か試したことがありますが、結果的に良かったのでここであげてみました。とても良かった本でも、案外と紙ベースで読み返す機会というのはなかなかないものです。それよりも新しく読みたい本があるならばそちらに手をつけたほうがいいと思います。であれば、これは読み返したいな・・という本はオーディオブックでやってしまおうという発想です。

②に関しては人を選ぶ発想かと思いますが、僕は本だけは迷わず買ってしまおうという考えで購入してしまうので、積ん読状態の本が多くあります。それも、結局新しく買った本に読みたいエネルギーが負けてしまうからなのですが、この理論でいくと積ん読状態が続くことになります。その積ん読本の中から、一つ優先順位をあげる本になるためにもオーディオブックで味見をして、良さそうだったら手を付ける、という発想です。半永久的に消化されない運命だった本を救い出すことができます。

③が、個人的には最もオーディオブックで利用する方法になります。自分では積極的に購入しないけど、ちょっと気になる、という本になります。この「自分では選択しない」という部分が非常に重要です。現代においては、自分にあったサービスやモノを次々と推奨される仕組みが多くあります。ECサイトも過去の購入履歴に基づいて提案してきますし、ニュースサイトも自分の好みに合わせたニュースを提示してきます。こうなると、自分の好みの沼にハマってしまい、その沼以外のジャンルに拡張する機会が減ってしまう構造になるわけです。

そこで、その快適な仕組みの中で、少しでも拡張性があるものを取り入れたいと考えたときに、「選書」というカテゴリーにおいてはオーディオブックは非常に優れたツールになります。先程あげたデメリットは、「ちゃんと読みたい本」を対象とした場合に適応されるものです。ちゃんと読まずに、味見する程度であれば、自分の意志に関わらず流し続けてくれるオーディオブックは最適だという考えもできます。紙の本であれば、目線を動かす、ページをめくる、など能動的なアクションが多く必要ですが、オーディオブックは意思に関わらず読み続けてくれる。そうすると一定程度の量にふれることができます。一定程度の量は、思わぬ気付きや驚き、面白さをもたらしてくれるかもしれません。

僕は、オーディオブックを通じて心理学に少し興味を持ち、その結果として心理学の本もうちょっと読んでみたいな・・という形で紙の書籍を購入した経験があります。このように興味関心ごとの拡張のための味見ツールとしては優れていると考えています。

好きなことを仕事にするリスクについて(参考書籍:科学的な適職)

天職は探すものではない

誰でも一度は自分にとっての天職とは?と考えたことはあるかと思いますが、ここ最近は天職は探して見つかるものではなく、今の仕事を天職に変えていくものだと考えています。

採用面接をしていても、スキルは十分にあったり、人柄も申し分ないのにも関わらず転職を繰り返している人がたまにいます。おそらく、彼らは天職を見つけることを望んでいるのだと思いますが、見つけようとすればするほど遠ざかるものではないかと思います。

 

「科学的な適職」という書籍の中にも、その主張を裏付ける内容がありました。

好きなことを仕事にしていた人ほど、「本当はこの仕事が好きではないのかもしれない・・・」や「本当はこの仕事に向いていないのかもしれない・・・」との疑念にとりつかれ、モチベーションが大きく上下するようになります。結果として、安定したスキルは身につかず、離職率も上がってしまうのです。

科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方

科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方

  • 作者:鈴木 祐
  • 発売日: 2019/12/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

世の中では、「好きなことを仕事に」というフレーズをよく見かけます。特に誰もが初めて仕事というものに向き合う新卒の就職活動ではそういった風潮が、(少なくとも僕が就職活動をしている10年前は)当たり前でした。 

そこで、ここでは好きなことを仕事にするリスクについて整理しておきたいと思います。 

 

1)仕事の対象が限定される

 そもそもなにかを「好き」になるということは、過去の経験による裏付けが必要です。何かを行った結果として、その行為がポジティブなものとして認識されるから好きになる。逆に言えば、経験をしていないことを好きになることはほとんどありません。

好きな食べ物も過去食べた経験があるから好きだと言えます。食べたことのないものを好きだという状態は基本的にはありえません。

一方で近い概念として「憧れ」ということはあるかと思います。例えば、ギターを引いたことはないけどエリック・クラプトンが好きだからギタリストになりたいとか。これは経験をしたことはないものとして、対象範囲はやや拡張させます。

いずれにせよ、好きなことを仕事にしようと考えたときには、

「過去に経験したことのうちポジティブな経験をしたこと」+「過去に見聞きしたことのうち憧れをもったこと」

に限定されることがリスクだと思います。

過去の経験自体が「世界にある仕事」という面積で考えたことのうち、極一部になり得るからです。特に新卒のときにイメージできる仕事は本当に一握りです。だからこそ、学生生活までで触れ合える食材系のメーカーや航空会社に人気が偏るのだと思いますが。

天職を見つけるという行為に対しては、好きなことを仕事にしようとして、かえって選択肢を狭めてしまい、その難易度を高めることになっています。好きなことを仕事にするのは対象を限定してしまうという意味で非常にリスクです。

 

2)期待値と現実のギャップが開きすぎる

好きなことを仕事にできた人は、なりたてにおいては幸福度は高くなると思います。そもそもその仕事につけたこと自体が目標達成になりますから、達成感と誇りみたいなもので大きなエンジンを積むことができると思います(僕は経験がありません)。

一方で、長期で見たときはどうでしょうか。これも『科学的な適職』から引用してみたいと思います。

いかに好きな仕事だろうが、現実には、経費の生産や対人トラブルといった大量の面倒事が起きるのは当然のことです。ここで「好きな仕事」を求める気持ちが強いと、その文だけ現実の仕事に対するギャップを感じやすくなり、適合派のなかには「いまの仕事を本当に好きなのだろうか?」といった疑念が生まれます。その結果、最終的な幸福度が下がるわけです。

これは、先程1)の部分で取り上げた「憧れ」を仕事にしてしまうとよりリスクが大きいということになります。「憧れ」が厄介なのは、経験がない分、基本的には光があたった部分を主な仕事だと認識します。しかし、表にでる仕事なんてものは本当に一部に過ぎないため、影の部分の仕事に対面した際の地味さや面倒さを許容できなくなります。

憧れで航空会社に就職した友人がすぐに辞めていく様子を何人か見てきました。それも必要な経験なのだと思いますが、仕事選びは慎重にしたいものです。

 

3)長続きしない

期待値が高すぎる反面、現実と対峙した際に「思ってたのと違った」ということで離職のトリガーになりやすくなります。そういった仕事が長続きしない、ということはビジネス人生としては案外と毀損が大きいものです。

天職を見つけようと思ったときに、個人的に重要だと思うのは、「作業興奮」と「コントロール感」の2つです。

前者は、その行為をしていること自体が自分にとって興奮に値するものであること。他のことが手につかなくなるくらい没頭している状態を意味します。後者は、その行為をするかどうかが自分で決定権があるということです。

両者とも、特定の職能に対する「時間」を必要とします。

作業興奮するためには、トレーニングが必要です。その特定の行為が得意になること。得意でないことをやり続けるのは一般的に苦痛です。なので、トレーニング期間が一定必要になります。仕事は長続きしないと、結果的にトレーニング期間が短く、将来もしかしたら天職になっていたかもしれない業務も早々に離脱してしまいます。長期投資ではありませんが、一定長くやり続けることで花が開くこともあるのだと思います。

また、業務をコントロールするためには、その環境における裁量権が必要です。裁量とは他者から信頼されている状態で得られるものです。その業務に対してハイレベルな業務ができないうちは、到底得られるもので貼りません。

結果として両者ともやはり一定の時間が必要なわけです。その時間の早さについて個人差があるかと思いますが、それでも一定の時間は必要になります。「まずは3年やってみよ」という古い教え自体はそういった意味合いもあるのかと思います。

 

天職を見つけるには

それでは、何をもって天職を見つけるのかというと、結論としては「今の仕事に打ち込む」ということになります。今の仕事に打ち込んだ結果としていつの間にかそれが天職に変わっているということ。

その根拠として『科学的な適職』の中で、2014年に行われたロイファナ大学の起業家に対するアンケートの結果が紹介されています。

その結果わかったのは、次のような事実です。

◎いまの仕事に対する情熱の量は、前の週に注いだ努力の量に比例していた

◎過去に注いできた努力の量が多くなるほど、現時点での情熱の量も増加した

被験者の中で、最初から自分の仕事を天職だと考えていた人はほぼいませんでした。最初のうちはなんとなく仕事を始めたのに、それに努力を注ぎ込むうちに情熱が高まり、天職に変わった人がほとんどだったのです。

 僕自身もどちらかというキャリア形成の仕方が川下り型(山登り型と比較して、何かを目指してキャリアを形成するわけではなく、都度の選択を重視して形成されること)なので、納得感が高いデータでした。

子供の頃や学生自体に好きになったものも、本当はこれに近いのかもしれません。最初はすべてがなんとなく始めたり、誰かがやっていたからやってみたことばかりです。子供の頃はそういった初動に対して何の違和感もなく挑戦できる。いくつかのことをやってみた結果自分と相性のよかったものを結果として好きになる。

しかし、大人になると幾分賢くなるため、限られた時間の中で無駄な時間を使わないために、過去の経験から優れたものを再度選択したくなるのかもしれません。しかし、仕事という面積で見たときには、誰もが一部のことしか知りません。その中で選ぶということ自体が本来は成り立たないことなのかと思います。

であれば、目の前の向き合っている仕事に没頭して、その中で様々な経験値をスライド式に展開していくことがどうやら良さそうです。

休日は仕事をするよりも読書をしよう。

休日は読書を習慣に

今日は書評というよりは、「休日に読書をすること」のメリットを改めて考えてみたいと思います。

休日の読書は忙しいサラリーマンにとって、結構継続が難しいと思います。子育て中ならなおさらで、意図的に時間を確保しないとできないちょっとした「贅沢な時間」です。僕自身ベンチャー企業のセールスマネジャーをやってますが、仕事を持ち帰って休日にすることになると、全くといって読書の時間を確保できません。

ただ、休日に仕事をすることは何の苦でもなく、むしろ楽しんでやっている方も多いと思います。僕も、前向きな仕事(特に未来に対する仕込みをするような仕事)についてはむしろ休日の集中できる環境でやったほうが生産性が高いと感じますし、ちょっと仕事をすることでそれが終わった後の過ごし方もなんだか充実しているように思います。

ただ、注意しなければならないのは、こういった状態は決して安定しておらず変動幅が大きいと言うことです。

仕事に対する感情は、実際のところ外部環境に左右されることが多いです。上司と意見が擦り合っているときは、未来のことを前向きに考えられますがそうではないときは、それに向き合っている時間はストレスに変わります。顧客の開拓がうまく機能しているときはプラスですが、顧客が減っているときはそうではない。

つまり、休日の過ごし方として「仕事」を習慣にしてしまうと、人生のトータルとしてのストレスコントロールが非常に難しいということになってしまいます。

それならば、休日と仕事は一切切り離して別のことを習慣化したほうが好ましいと思います。それを趣味としている人もいると思いますが、僕は読書を一つの軸にしたほうがいいと考えています。例えば、サーフィンや友人との飲み会を軸にしている人も、それに加えて読書をしたほうがいいということになります。

 

読書を習慣にすべき3つの理由

そう考える理由は3つあります。

 

1つ目は、複利で仕事に効いてくることです。僕の選書のスタイルとして「足元の課題の解決につながりそうな本」と「全然関係ないが興味ある本」を並行して読むことがあります。内容のインプット自体は、前者が足元の意思決定力を高めること、後者が未来の意思決定力を高めることを目的としています。

それだけではなく、読書を続けているということ自体が、論理的思考力を構造的思考力を養います。プロ野球選手で言うところのストレッチや素振りみたいな役割で、その行為自体が目的ではありませんが、実践の成果を高めたり、日々のルーチンの成果を安定化させるような効果のイメージです。

つまり、毎日の仕事や業務に効果があり、かつ未来に対しても投資しているということから投資でいう「複利」のような効果があると考えています。

 

2つ目は、続けやすいことです。1つ目で上げた仕事への効果という観点は、趣味に没頭することでもその思考プロセスを応用できたり、思考していること自体が素振り効果があると思います。

しかし、継続性の観点では読書に軍配があがります。読書は本さえあれば継続があります。有り難いことに本の量は人生で読みきれないほどありますし、個人の人生で枯渇するということもありません。

難易度も適切に上げたり下げたりすることが可能です。ロールプレイングゲームは難易度がプレイヤーのレベルに合わせて適切に上がっていくというハマりやすい仕組みを取り入れたものですが、読書もこれに近い形で実践可能です。個人で設定しなければならないという点でゲームよりやや面倒くさいですが。

幸運にも現在は、たいていのジャンルでも入門書やマンガ、youtubeによる解説動画などによってeasyモードで始めることができます。読書を習慣にするにはうってつけの時代です。

 

3つ目は、精神的な安定をもたらすという理由です。人生100年時代において、個人が抱える課題というのは本当に様々です。仕事だけではなくプライベートでも問題を避けて生きることは極めて困難です。

そういった問題に対する心構えは①同じ課題を持っている人がいることを認識する、②そういった人がどうその問題に向き合っているのか知る、ということです。誰しも、自分だけこんな問題を抱えていると感じると、孤独になりますし不安になります。しかし、たいていの悩みは先人が経験していることが多く、しかもそういった情報は書籍化されていることが多いです。

少しずれるかもしれないですが、そもそも問題に対して新しいインプットが入るだけでもストレスが減ります。問題が問題のままであるという状態は、「同じ思考をぐるぐる回している」状態だと解釈することもできます。これは自分の脳みそだけでは、もう突破口がない状態です。そこに対して、読書というのは他者の思考プロセスを疑似体験できるということ。なので、思いがけない突破口が見えたりします。全然関係のない本を読んでいてもこういったアナロジー的な解決というのはよく起こります。

趣味ではストレスそのものを別の作業で発散するという行為かと思いますが、読書は直接的な処方箋になりえます。つまり、新たなストレスへの予防(スキル強化)と、治療(ストレス発散)になるという点でやはり読書というのは効果的なのです。

 

読書を習慣にするために読みたい書籍

読書を習慣にするためには、以上のように読書をすることが人生の役に立ちそうだと心底理解している必要があるかと思います。それを助けてくれる本を4冊紹介したいと思います。選書の仕方や、効果的な読書術についてもこれらを一通り読んでおけば、長い読書人生にそれこそ複利で効いてくると思いますので、おすすめです。

知的戦闘力を高める 独学の技法

知的戦闘力を高める 独学の技法

  • 作者:山口 周
  • 発売日: 2017/11/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
レバレッジ・リーディング

レバレッジ・リーディング

  • 作者:本田 直之
  • 発売日: 2006/12/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書
 

 

 

因果関係を考えすぎない方がうまくいくかも(参考書籍:GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代)

2020年になって読破するのに、長い時間がかかった本があります。

アダム・グラントという人が書いた「GIVE&TAKE」という本です。副題に「与える人こそ成功する時代」とついている通り、仕事を通じて成功する人とは人に惜しみなく与えることができる人だという、人間関係のマインドシップについて数々のエピソードと共に分析しています。

GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)

GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)

 

 

win-win思考の人が成功する

本書では人間を下記の3つのタイプに分類して分析を進めます。

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この3タイプの中でギバーが成功する、という話はビジネス本を数十冊読んだことがある人であれば何度か聞いたことのあるような主張に思えます。しかし、この本のユニークなところはギバーは「最も成功するギバー」と「最も失敗するギバー」の2種類が存在する、としていることです。

▼タイプ別の成功しやすさ

1位:成功するギバー

2位:テイカー、マッチャー

3位:失敗するギバー

 どういうことかというと、ギバーは人に与えるという行為を行う際に、当然ですが時間も気力も有限であるため、ただただ与えるだけに回る人は、疲れ切ってしまって「燃え尽き症候群」に陥るということです。更にたちが悪いのがテイカーの存在(世の中にイメージ20%くらい)で、この人達は基本的に「win-lose」の発想なので、どうしても構造上成果がでにくいわけです。

では、成功するギバーはどんな人なのかというと次の3点です。

①win-winで考える(lose-winではない)

②困ったら助けを求める

③テイカーを見極めて避ける

特に大事なのが①で、これは置き換えれば「自分のことも他人と同様に大事にする=自己利益を追求すること」です。こうすることで、ギバーが失敗する理由である「燃え尽き症候群」を予防することができる。また、一定の燃え尽きはやってくるものとし、②のようにその時の対応策をしっかりもっておくということも大事です。

 

win-winの仕組みを見つけること

人間関係にまつわることなのでどうしても抽象度は高くなるかと思いますが、僕なりにどういうった姿勢や考え方が必要なのかを考えてみました。

結局必要なのは「構造で考えることができる力」と「未来志向」ではないかと思います。

win-winで考えるということは、あらゆる意思決定や交渉、コミュニケーションにおいてお互いが得する選択肢をとるということかと思います。テイカーやマッチャーが見えている世界は非常に一面的でわかりやすい短期の利益に対して自分が得をする、相手が損をする、というものさしで判断しているように見えます。

一方で成功するギバーはこれをもうすこし俯瞰で考えたり両者が得をするようなポイントを見出すことができる。これは物事を構造化し、仕組みで考えることができる人が強い力です。

つまり、(A)win-winであり続けることができる選択肢を生み出し、(B)その選択を取ることができる、というABが両立して初めて成功するギバーになれるのではないかと思います。

また、未来志向自体も仕組みで考える力に内包されますが、やはり短期だけで考えると、ギバー的な選択肢は「lose-win」になりやすい気がします。

例えばマネジメントひとつとっても、足元の成果に跳ね返らなくても自分の時間を使って他人に投資するという選択をとることは稀ではありません。これを短期だけで考えて自分の時間の使う先を選ぶと、そういった部下に対しては露骨に劣後させたコミュニケーションをとることになりますし、それこそ部下からの信頼は得られることはありません。そういう上司は将来その部下が取引先になったりした場合に、何かを得るということは難しく、むしろ逆効果になり得ると思います。

一方で、未来も含めた「win-win」で思考できる人は、部下にGIVEをしていくことの将来的な利益を理解してます(ここはちょっとマッチャー的な発想なのかもしれないですが)。

これは、「将来的に自分が想定していないTAKEが将来のどこかで降り掛かってくる」という仕掛けを足元で実行しているイメージです。

本書を翻訳している楠木教授もこのように次のように言ってます。

ギバーは「記録」より「記憶」を重んじる。だから時間を経ても、人間関係のつながりを再構築することができ、そこから恩恵を得ていくのである。ギバーにとって恩恵とは「思いがけずくるもの」であり、事前に期待したり損得勘定するものではない。

 

因果関係すらわかっていない

基本はGIVEであるというスタンスに変わりはなく、GIVEすること自体が自分にとって有意義であったり、楽しい行為であること。その結果として自分が消耗し燃え尽きるのではなく、自分を回復させながら他者に与え「続ける」ことができる。

とはいえ、完全に燃え尽きを予防することは難しいので、他者に頼るという選択肢も取る。その結果として、未来に自分も想定していないような恩恵を得られる。

そして、そういった恩恵はギバーからすると因果関係すら特定していないのだと思います。あのときのあれがこれに効いているのか、という発想すらテイカーやマッチャーのものなような気がするので、理想としては今立ち向かっている課題や目標に対してwin-winを思考しながら他者にどう貢献できるのか、というスタンスを大事にし続けることがギバーへの第一歩だと思います。

なぜ習慣を変えるのは難しいのか?(参考書籍:ぼくたちは習慣で、できている。)

習慣とは何か

年始に立てる目標がご多分に漏れず毎年未達に終わるのですが、そろそろどうにかしたいという思いで今年は「習慣化」についての勉強から始めてます。

大前提として習慣にするということは、「無意識」でその行為を行うということ。歯磨きや靴紐を結ぶのにいちいち順番や動きを考えることはありません。つまりその行為を「意識的に」行っている時点でまだ習慣には遠い状態。無意識化に持っていくには、報酬に基づく反復運動を繰り返すことが大事なようです。 

ぼくたちは習慣で、できている。

ぼくたちは習慣で、できている。

  • 作者:佐々木 典士
  • 出版社/メーカー: ワニブックス
  • 発売日: 2018/06/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

なぜ習慣を変えることはは難しいのだろう?

まず、報酬についてですが、物事にはたいてい罰と報酬の二面性があります。ジョギングするには疲れるという罰がありますが、健康になるという報酬があります。飲酒には太るという罰がありますが、気分が良くなるという報酬があります。

ここで、人間が最もとりやすい行為は「より早く報酬が手に入る」選択肢です。ジョギングで健康になる未来より、疲れない現在。飲酒を諦めて健康になる未来より、気持ちよくなる現在。これが太古よりプログラミングされている脳の意思決定構造なので、それに逆らうのはなかなか難しい。これが習慣を変える難しさを説明してくれています。専門用語では、双曲割引と呼ばれるやつです。

これに対抗するのは、報酬の置き換えです。つまり、未来の報酬が現在の報酬を上回ることを「無意識下」になるまで理解する/疑問を浮かばなくする、ということです。お酒が体質的に飲めない人はお酒を断ることに毎回どうしようかな、、と迷うことはありません。無意識のレベルでそういうもんだと決めているからです。

でもそれは飲酒すると体調が即悪化するという「罰にバランスが傾いていること」により習慣化されたものです。では、一見して現在の報酬の方が魅力的な場合はどうしたらいいか。それは未来の報酬を確かに魅力的な報酬だと実感することしかありません。実感することで相対的に未来の報酬の魅力度を高めていく。そのためにはまずその行為を繰り返さなければならないようです。

習慣を変えるためにはトリガーを設計せよ

行為を繰り返すには、その行為のハードルを下げる必要があります。とにかく障害を減らすという作業です。朝のジョギングならば、まず朝早くおきること、寝癖をなおすこと、運動着に着替えること、様々な局面にめんどくさくて挫折する理由が隠されています。これらを一つずつ要素分解して障害を減らす。

例えば、

・夜早く寝る
・運動着のまま寝る
・靴を厳寒にだしておく
・寝癖のまま走れるコースにする

などでしょうか。朝早く起きるための報酬として、寝る前にちょっとした朝食を用意するのもよいかもしれません。

そしてこれらの意識的な活動の反復運動は、それを実行できたという達成感自体が報酬に置き換わっていきます。その力も利用しながら反復運動を繰り返していく。そうすると、行為の「トリガー」に出会ったタイミングで無意識にその行為を連想、そして実行できるようになります。

トリガーとは、先程の例で言えば、朝起きたら運動着を着ている→ジョギング、靴が用意されている→ジョギングという、その行為を誘発させる別の行為です。朝起きたら口が気持ち悪いから歯を磨く、歯を磨いたら鏡を見るから顔を洗う、顔を洗ったら・・・という形で、ある行為は別の行為のトリガーであり、僕たち大人は無数のトリガー+行為で既に習慣化されている生き物です。
なので、新しい習慣を身に着けようとするならば、まずはこの既存の習慣の連鎖の中に、意図的に習慣化させたい行為のトリガーを設計しなければなりません。

僕はここ3年程、読書を習慣にするためにかなり意志をつかってその時間を確保してきました。しかし、どうやら意志はあまり信頼できるパートナーではないようです。
なぜなら、先程見たように物事には二面性があって、何らかの報酬を得ながら意思決定するのが意志の仕事だからです。本質的には、たとえそれがどんなに足元の報酬が低くても、未来の報酬が得られるのならば後者の選択をすべきで、読書はその代表格と言えます。

 

やり始めるからやる気が出る

今回の学びを得て、僕は読書をするトリガーを増やすことにしてみました。朝起きたらまず開くPCの上に本を置く。ダイニングにも別の本を置く。電車で開くスマホのなかには、目立つところにAudibleを置く。
やる気は行為をする前に生まれるものではなく、行為をしてから生まれるもののようで、これを作業興奮というらしいです。であれば、読書もジョギングも、まずは1ページ目、まずは1歩目をどれだけハードルを下げて増やせるか。その果てに、無意識化=習慣化があるということのようなので、さっそくこのノートを閉じたら本を開いてみようと思います。

「THE MODEL」を取り入れる上での注意点(参考書籍:THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス)

2019年が終わり2020年を迎えました。あけましておめでとうございます。

2019年を振り返って、個人的に読んでよかった(良すぎた)書籍を整理しておきたいと思います!

 

◆2019年読んだ本ベスト3

第1位 『サピエンス全史』

第2位 『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』

第3位 『成功はランダムにやってくる!チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方』

 

上記はすべて当ブログで取り上げたことがありますが、『THEMODEL』については昨年度1年でだいぶ読み方・捉え方が多面的になってきたと思うので、改めて取り上げみたいと思います!

※過去記事も見ていただけると嬉しいです。

 

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営業の新しいメンタルモデルを構築した

THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

  • 作者:福田 康隆
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2019/01/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 こちらの本は2019年の1月に発行された本ですが、まさに「営業」の潮流が変わってきたことを象徴するような1冊です。他にも、『アクセル デジタル自体の営業最強の教科書』や『インサイドセールス 究極の営業術』など、それに値する本も出版されており、営業界隈の方は手にとったことがあるかもしれません。

最近は最先端の営業のノウハウを得ようと思ったら、書籍だけではなくセミナーやウェビナー、SNSやブログなど様々なツールがとても充実しています。僕もそれぞれからインプットを得ている立場ですが、こういった散漫的な情報のとり方でも良質なインプットが得られるのは、営業としての考え方が「標準化」してきているからだと思います。共通の土台にのって各社・各人がアウトプットができるので、話が早い。イチから論理や概念を取り上げる必要がなくなって、それぞれのコンテンツが枝葉のように理解できるため、インプットが蓄積できる。これが『THE MODEL』がもたらした最大の功績だと思います。

そう考えると、営業とは?のメンタルモデルを再構築しているこの本は本当にすごいと思います。MAやCRMの各社のマーケティング戦略とセットだからこれだけの影響をもたらせているわけですが、それも翻ってはTHE MODELという考え方のコンテンツとしての力強さが支えていると解釈できます。

 

売るための仕組みづくりを再定義した

また、このように考え方に賛同され、広まっているという背景には、営業に対する既存の考え方に課題や問題意識を感じる方がそれだけ多かったと捉えることもできます。営業本といえば、トップセールスマンによる売り方のハウツー本が主流でしたが、圧倒的な行動量系だったり奇抜なアクションだったり、再現性のないものが多い印象でした。結局のところ、「俺がやるのはちょっと・・」という感想を持つことが多かったのだと思います。
トップセールスマンになる、ということは既存の仕組みの中で、既存の商品の中で、いかに多くを売るか?という「個人のパフォーマンス」に依存する考え方です。なぜそういう発想になるかというと、営業は営業、マーケはマーケと縦割りの考え方をされてきた組織が多いからではないでしょうか。

それに対して、THE MOEDLの考え方は、「個人のパフォーマンス」に依存するのではなく、「組織の仕組み」にフォーカスを当て、「売れ続ける仕組み」を作る考え方です。これにより、マーケからセールスの一貫したフローで改めて捉え直す会社が増えました。組織の体制から抜本的に改善するような会社の実例も聞かれてますので、この影響は今後も続くのではないかと思います。

 

そのまま取り入れることのリスク

ただここで注意しなければならないのは、THE MOEDLはあくまでも一つのベストプラクティスなのであって、その中でも特に汎用性が高い仕組みだ、ということを理解しておくことです。丸パクリでは絶対に機能しないですし、自社や自事業に合わせた取り入れ方をしないと事業として後退することもありえます。

先日開催されたインサイドセールスカンファレンスでは、THE MODELが一番相性が良いのは、ターゲットがホリゾンタル(全産業型)×SMB(中小規模)の商材だと議論されてました。逆にバーティカル(業界特化型)だったり、エンタープライズ(大手向け)の商材には必ずしも相性が良くないと捉えることができるかと思います。いずれにしても、今向き合っている事業の課題に対して、どの打ち手が最適か?に向き合うことがビジネスの面白さなのであって、間違っても「流行っているから」や、「なんか良さそうだから」で取り入れる安易な選択をしないように注意したいです。

SPINを顧客の立場から捉え直す(参考書籍︰大型商談を成約に導く「SPIN」営業術)

10年間主流であり続けるSPINという技術

最近、インターン生や新入社員などの営業初心者に対して研修をする機会が増えたのですが、一つの問題意識を抱いてます。

それは「座学なめすぎ」ということです。実践やロープレをたくさんするのは良いことですが、座学をしっかりやらないと前提の知識が少ないのでフィードバックの価値が半減します。

座学で体系的に論理や思考プロセスを理解しておくことは、その技術を使えるようになるだけではなく、それを習得するスピードを上げます。更に、学び始めの一番モチベーションが高いうちに知識を体得しないと後になってその優先度は下がるはず。なので、いかに初期にちゃんと理解しておくか?が重要だと考えています。

そんな中、改めて自分はどうだっけ?と思ったので、営業の議事としては基礎となるSPIN本を再読致しました(応用でもあるのですが)。そこで気付いたのは、SPINは「顧客」の立場に立てば理解しやすいということです。

大型商談を成約に導く「SPIN」営業術

大型商談を成約に導く「SPIN」営業術

  • 作者: ニール・ラッカム,Neil Rackham,岩木貴子
  • 出版社/メーカー: 海と月社
  • 発売日: 2009/12/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 購入: 3人 クリック: 32回
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こちらの本は2009年発行で今から10年前にパブリックなものになった考え方ですが、現在でも商談においては主流な考え方になっています。営業組織をマネジメントする方や研修する立場の方は一度は学んだことがあるのではないでしょうか?

 

SPINとは?

ここでは、SPINを初めて知る方、久しぶりに触れる方のためにその考えを整理してみたいと思います。まずは下記引用から。

大型商談では、商談中にどれだけ多くの潜在ニーズ、つまり見込み客が抱える問題を発見できるかは、セールスの成否にそれほど影響がないということだ。大型商談で重要なのは、どれだけ多くの潜在ニーズを発見できるかではなく、発見したあとにそれをどう料理するか、なのだ。(中略)成功の鍵は、潜在ニーズをどう育て、どのような質問の仕方をすることで潜在ニーズを顕在ニーズに変えていけるか、である。

 

潜在ニーズと顕在ニーズ

まず営業活動は「顧客のニーズを発見して自社の商品やサービスでそれを解決すること」と解釈した場合、SPINではニーズを2つに分けて考えます。

  • 顕在ニーズ︰顧客の欲求や欲望
  • 潜在ニーズ︰顧客の問題や課題

よく営業の研修では、顕在ニーズは顧客が口にすることが多いのでそれを深ぼって潜在ニーズを把握しよう!という主張があります。そこでは、顕在ニーズより潜在ニーズの方が上位概念として取り扱われますが、解釈を間違えないようにしたいです。どちらも同様に重要で、質問や商談の流れを体系化するために分けていると思っていた方がいいです。

 

SPINとは?

そして、これら2つのニーズをあぶり出して提案につなげるための4つの質問の仕方がSPINという技術です。

  1. 状況質問(Situation)
  2. 問題質問(Problem)
  3. 示唆質問(Implication)
  4. 解決質問(Need-payoff)

特にSPINで重視されるのが示唆質問と解決質問で、これらの質問の仕方が先に引用したとおり「潜在ニーズ」を「顕在ニーズ」に育てる肝となるものになります。これらを理解し、活用することができれば、現在取り扱っている商材やサービスに依存しない営業スキルを身につけることができます。

 

顧客の立場に立って理解する

SPINの考え方は、営業を受ける顧客の体験を想像し、その解像度が高いほど腹落ちしやすくなります。僕自身は、外部の営業を受ける立場になったことでSPINの理解度が増しました。なので、新人セールスはまず営業を受けてみたり、自社内で営業を受ける立場の人にインタビューをしてみると良いかもしれません。

 

顧客の立場①「俺だけじゃ決められない」

SPINはタイトルにもあるとおり大型商談を対象としたスキルです。大型商談の定義は明確にされてませんが、予算×検討期間×利用期間といった変数が大きければ大型商談と位置づけて良いかと思います。

そういった場合、顧客は自分の判断だけでは決められません。上司や別部署の担当者など、「俺がいいと思ったモノを他の誰かにも良いと思ってもらう」必要があります。決済は自分でできても「俺が決めた」という事実が利用時になってどのような社内評判になるかを気にすることもあります。「営業がイイヤツ」とか、「ノセられて」とかでは受注に至りません。そのため、

  • 営業には感情+論理(ロジック)が必要

なのです。

でも感情でしか納得していない客は、他の人たちを説得できない。だから、他の人とも検討することになりそうだなと思ったら、客観的なビジネス上の利点をあげるようにしているんだ。おかげで大型商談の業績も前より上がったよ

 

顧客の立場②「断るのはめんどくさい」

決済権があったり、その影響力があったりする立場の方は当然年に数十回の営業を受けています。誰しも進んでネガティブな事を言うのは避けたいですし、何なら嫌いな人からも一応は好かれておきたいと思います。断ろうと決めていても、適当にポジティブな事を言って営業に帰ってもらった方が効率的だとも考えます。一方で、営業はその円滑な別れを案件化と勘違いします。忙しい営業とって無駄追いは致命的。そのため、

  • 営業の進展は具体的なアクションにつながったかどうか

で評価しなければなりません。顧客の反応や、関係値が前進したからなどと悠長な事で良し悪しを判断するセールスはその進捗を大幅に遅らせることになります。

※具体的なアクションの例︰次回商談のアポイント、決済者とのアポイント、デモンストレーション、見学、見積書の送付

 

顧客の立場③「先の読めない質問は腹立つ」

商談の場では基本的に営業が主導で会話が進む事が多いと思います。少なくとも会話の始まりはそうあるべきです。営業も本心で顧客の役に立ちたいと思って様々な質問をしたとしても、その質問が誰のためになっているか考えなくてはなりません。

状況質問は顧客の状態を正しく認識する上では必要不可欠です。ですが、それがあまりにも多いと顧客はこの質問が何に役に立つか疑問を抱きます。そのため、

  • 状況質問を減らすために下調べをしておく

ことが大事になります。

「そんなことくらいホームページを見ておけ」とならないようにしましょう。

状況質問で利益を得るのは見込客かセールスパーソンか?明らかに後者だ。多忙な見込客は、セールスパーソンに現状をこと細かく説明する事態を喜ぶはずがない。

 

顧客の立場④「なんで良いと思ったか忘れる」

商談ではあれだけ温度感が高かったのにその後に全然進まないという状態は古今東西存在すると思います。その大半は顧客がきちんと商材の利点を捉えていないが故に、「なんで良いと思っていたか」を改めて思い出してないからです。加えて、1時間の商談で記憶に残る情報なんて、せいぜい1つや2つです。要はニョロニョロとワンセンテンスくらい。ほかにも様々なタクスを抱えている顧客は実態はそのようなものです。顧客を過大評価してはいけません。

SPINでは、その状態に陥りやすいのは、よくある一般的な問題に対する利点を訴求した場合だと説明しています。そのため、

  • 顧客の顕在ニーズに対して自社商品がどのように応えられるかを紹介する

ことが大切です。これを顧客の「利益」と定義してます。一方で単に商品の特徴から顧客にどのように役に立つのかは「利点」を紹介していることになります。「利益」を紹介することで、顧客にユニークな課題解決をすることができると思わせ、なぜそれが有用なのかを覚えていてくれます。

「利点」は商談のあとにすぐ忘れられてしまうことがわかっている。つまり、「利点」の効果は一時的だ。対象的に、顕在ニーズとつながっている「利益」は、見込客にとって覚えやすく、次の商談まで効果が持続する。

 

顧客の立場⑤「ビジネスの視点が合う人と話したい」

誰しも、ビジネススキルが高く一目置かれている方には話を聞きたい、参考にしたいと思うものです。そういう人はたいてい事業責任者だったり、役職者だったりで営業職ではないことが多いですが、極論を言えばこの人達が営業をしたらめちゃくちゃ売れると思います。

では通常の営業と、これらのビジネススキルを備えた方では何が違うのでしょうか?様々あるかと思いますが、

  • 売上責任(収支責任)を持っている
  • ビジネスドライバーを常に思考している

ことが営業上は差分要素として大きいと考えます。それ故、決済者の立場になってその痛みや課題感に共感し、かつ顧客が見えていない変数も捉えることができる(示唆質問)のだと思います。また、課題の解像度が高いだけではなく、打ち手の幅も豊富です。示唆質問や解決質問をSPINという技術を使わずとも自然にできてしまいます。そう考えると、

  • 自社の商材や事業について事業責任者の立場になって考えまくる

ことが、実は一番営業力をあげるかもしれません。そのことが、事前準備の仮説の精度を高め、また示唆質問の幅を増やし、顧客を自社商材を活用して成功に導けるのではないのでしょうか?

役割や役職がないからなどと悠長なことを言っていれば足元の営業スキルもついていきません。役割がなくても常に上位の立場で思考し続けることが、キャリア形成だけではなくSPINの会得にも大きく関わりがあるというのが僕の考えです。

 

以上のとおり、SPINの技術は顧客の立場からすると、そうした方が良さそうだと理解できることばかりです。技術本は多数ありますので目移りしたり新しい技術に飛びついたりしたくなりますか、まずは軸足を一本作ること。そのためにはまずその理論を頭で理解することが必要です。(完)

 

◆当ブログで紹介した書籍

大型商談を成約に導く「SPIN」営業術

大型商談を成約に導く「SPIN」営業術

  • 作者: ニール・ラッカム,Neil Rackham,岩木貴子
  • 出版社/メーカー: 海と月社
  • 発売日: 2009/12/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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