因果関係を考えすぎない方がうまくいくかも(参考書籍:GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代)

2020年になって読破するのに、長い時間がかかった本があります。

アダム・グラントという人が書いた「GIVE&TAKE」という本です。副題に「与える人こそ成功する時代」とついている通り、仕事を通じて成功する人とは人に惜しみなく与えることができる人だという、人間関係のマインドシップについて数々のエピソードと共に分析しています。

GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)

GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)

 

 

win-win思考の人が成功する

本書では人間を下記の3つのタイプに分類して分析を進めます。

f:id:blogtomizawa:20200301183632p:plain

この3タイプの中でギバーが成功する、という話はビジネス本を数十冊読んだことがある人であれば何度か聞いたことのあるような主張に思えます。しかし、この本のユニークなところはギバーは「最も成功するギバー」と「最も失敗するギバー」の2種類が存在する、としていることです。

▼タイプ別の成功しやすさ

1位:成功するギバー

2位:テイカー、マッチャー

3位:失敗するギバー

 どういうことかというと、ギバーは人に与えるという行為を行う際に、当然ですが時間も気力も有限であるため、ただただ与えるだけに回る人は、疲れ切ってしまって「燃え尽き症候群」に陥るということです。更にたちが悪いのがテイカーの存在(世の中にイメージ20%くらい)で、この人達は基本的に「win-lose」の発想なので、どうしても構造上成果がでにくいわけです。

では、成功するギバーはどんな人なのかというと次の3点です。

①win-winで考える(lose-winではない)

②困ったら助けを求める

③テイカーを見極めて避ける

特に大事なのが①で、これは置き換えれば「自分のことも他人と同様に大事にする=自己利益を追求すること」です。こうすることで、ギバーが失敗する理由である「燃え尽き症候群」を予防することができる。また、一定の燃え尽きはやってくるものとし、②のようにその時の対応策をしっかりもっておくということも大事です。

 

win-winの仕組みを見つけること

人間関係にまつわることなのでどうしても抽象度は高くなるかと思いますが、僕なりにどういうった姿勢や考え方が必要なのかを考えてみました。

結局必要なのは「構造で考えることができる力」と「未来志向」ではないかと思います。

win-winで考えるということは、あらゆる意思決定や交渉、コミュニケーションにおいてお互いが得する選択肢をとるということかと思います。テイカーやマッチャーが見えている世界は非常に一面的でわかりやすい短期の利益に対して自分が得をする、相手が損をする、というものさしで判断しているように見えます。

一方で成功するギバーはこれをもうすこし俯瞰で考えたり両者が得をするようなポイントを見出すことができる。これは物事を構造化し、仕組みで考えることができる人が強い力です。

つまり、(A)win-winであり続けることができる選択肢を生み出し、(B)その選択を取ることができる、というABが両立して初めて成功するギバーになれるのではないかと思います。

また、未来志向自体も仕組みで考える力に内包されますが、やはり短期だけで考えると、ギバー的な選択肢は「lose-win」になりやすい気がします。

例えばマネジメントひとつとっても、足元の成果に跳ね返らなくても自分の時間を使って他人に投資するという選択をとることは稀ではありません。これを短期だけで考えて自分の時間の使う先を選ぶと、そういった部下に対しては露骨に劣後させたコミュニケーションをとることになりますし、それこそ部下からの信頼は得られることはありません。そういう上司は将来その部下が取引先になったりした場合に、何かを得るということは難しく、むしろ逆効果になり得ると思います。

一方で、未来も含めた「win-win」で思考できる人は、部下にGIVEをしていくことの将来的な利益を理解してます(ここはちょっとマッチャー的な発想なのかもしれないですが)。

これは、「将来的に自分が想定していないTAKEが将来のどこかで降り掛かってくる」という仕掛けを足元で実行しているイメージです。

本書を翻訳している楠木教授もこのように次のように言ってます。

ギバーは「記録」より「記憶」を重んじる。だから時間を経ても、人間関係のつながりを再構築することができ、そこから恩恵を得ていくのである。ギバーにとって恩恵とは「思いがけずくるもの」であり、事前に期待したり損得勘定するものではない。

 

因果関係すらわかっていない

基本はGIVEであるというスタンスに変わりはなく、GIVEすること自体が自分にとって有意義であったり、楽しい行為であること。その結果として自分が消耗し燃え尽きるのではなく、自分を回復させながら他者に与え「続ける」ことができる。

とはいえ、完全に燃え尽きを予防することは難しいので、他者に頼るという選択肢も取る。その結果として、未来に自分も想定していないような恩恵を得られる。

そして、そういった恩恵はギバーからすると因果関係すら特定していないのだと思います。あのときのあれがこれに効いているのか、という発想すらテイカーやマッチャーのものなような気がするので、理想としては今立ち向かっている課題や目標に対してwin-winを思考しながら他者にどう貢献できるのか、というスタンスを大事にし続けることがギバーへの第一歩だと思います。