部下に言いたいことが伝わらない2つの理由(参考書籍:具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ)

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皆さんは風呂に入っている時は何を考えますか?

何も考えずに鼻歌を歌っていますか?それとも、途中にしていた課題の続きを考え続けたりしてますか?また、今日の1日を振り返る時間に当てているかもしれません。

僕はといえば、その時の脳内シェアの高い「悩み」が頭に浮かび、その悩みについて自動思考が始まります。とはいえ、風呂場はリラックスしている環境のせいかその自動思考は比較的「楽観的」な思考で進み、案外いい感じの解決策が見つかったり、筋のよい論点を見出すことができたりします。(要は仕事をしているわけですね)

 

自分の言っていることが伝わらない

最近はその風呂場で考える「脳内シェアの高い議題」が、社内コミュニケーションであることが多めです。社内コミュニケーションとは上司とのそれと同僚やメンバーとのそれがあります。

 

僕自身も、「伝わらんなぁ」というフラストレーションを抱えていますが、 悲しいことに、思い入れの深いメンバーからも「とみざわさんの言っていることがわからない」と直接言われたり影で言われてたりします。今日はこの件について考えてみたいと思います。

 

なぜ伝わらないのか?

言っていることが伝わらない2つの理由

まず、言っていることが伝わらないというのは2つの観点に分けられます。

 

(1)具体的すぎてわかりにくい

(2)抽象的すぎてわかりにくい

 

この2つの観点を、営業マネジャーがメンバーに対して、営業手法を伝える場面で説明を試みてみます。下記のマネジャーの心の中のロジックをご覧ください。

 

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売り上げ目標100万円を1ヶ月で達成しよう。

そうすることでその売り上げを来月の集客コストに回して集客目標を達成すことができるぞ。

そのためには、先月よりも30万円の売り上げUPを実現しなくてはならないから、これまでやってこなかった飛び込み営業で商談数を増やそう。

具体的には、100件の飛び込み営業が必要だ。

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1.具体的すぎて伝わらない

まず、メンバーに対してミーティングなどで「今月は100件の飛び込み営業をしよう」と伝える行為が、「(1)具体的すぎてわかりにくい」に該当します。これは、なんのためにそれをやるのか?なぜその手法をとるのか?という背景や目的が不透明なため理解できないという構造です。

 

2.抽象的すぎて伝わらない

逆に、「来月の集客目標を達成する貢献しましょう」と伝える行為が「(2)抽象的すぎてわかりにくい」に該当します。今度は、具体的にはどうしたらいいのか?どのくらい頑張ったらいいのか?が明示されていないので理解できないということになります。(僕のわかりにくさはこっちが原因であることが多いです。情報のわかりやすさを生業とする営業マンとしては失格です)

 

たいていのコミュニケーションミスは上記の2点から説明できるような気がします。もちろん、単純に論理構成が悪くて支離滅裂というケースも多々ありますが、それも抽象から具体への降りてくる段階、もしくは具体から抽象にあがる段階での誤りやつながり不足だと考えると、やはり説明できます。

 

「適切な抽象度」は受け手によって変動する

また、この2種のどちらかのみが原因ということは少なく、多くの場合ミックスになっています。なぜそうなるかというと、コミュニケーションの受け手が完全に理解するためには、その受け手の抽象度と具体性のレベル感にフィットしたものを提供する必要があるからです。

 

そして、これを日常的にすべてのコミュニケーションで行うのは非常に難しい。特に、余裕のない時に関してはどうしてもこのような配慮をショートカットしがちになります(まさに期末を迎える今は僕はとてつもなく余裕がなく、その余裕のなさが周囲に伝わるほどでいつも反省してます)。故に情報の伝え手の論理が、受け手の理解を置いてけぼりにして、その受け手にとって抽象的すぎたり、具体的すぎたりして総論として「わかりにくい」となるのだと思います。

 

情報の受け手に期待しすぎている

さらに、受け手(部下や上司)はわかってくれるはずだ、という期待がよりコミュニケーションミスを生んでます。情報の受け手が優秀であるほど(ここでいう優秀とは抽象と具体の往復ができるという意味)そのミスが生まれるリスクが低くなるわけですが、組織で働く以上、階層によって情報の非対称性は発生します。それ故にたとえ優秀な人材からしても「わかりにくい」という事象が生まれます。

 

「相手に応じた抽象度」で伝える

なので、伝え手は相手の状況や相手の理解度に合わせてアウトプットする必要があります。これをサボってはいけない。また、これをサボって相手の理解に期待を寄せる行為は、ある意味理不尽であり、お互いの不信感を煽る行為です。

『地頭力を鍛える』で有名な細谷巧さんの著書『具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ』にはこのように書いてます。

状況と相手に応じてちょうどよい抽象度でコミュニケーションすることが重要です。「抽象的だからわかりにくい」ということがクッローズアップされがちですが、じつは「具体的すぎてわかりにくい」こともあるのです。(121p) 

 

具体と抽象を往復できる力を鍛えよう

では、そのようなコミュニケーションミスが生まれないためにはどうしたらいいか。

それは「抽象と具体の往復できる力を鍛え、より多くの情報の受け手に対して、適切な階層でアウトプットできるようになること」です。

 

もちろん、マネジャーである以上、メンバーの抽象化能力の開発を支援していくことも努力していきます。しかし、このあたりは向き不向きもありそうです。優秀なプレイヤーが全員マネジャーを目指すわけではありません。なので、その能力を強制するのもいかがなものかと思ってきました。細谷さんもこう言ってます。

「こんな感じで適当にやっといて」と言われて、いい加減な「丸投げ」だと不快に思う人は、具体レベルのみの世界に生きる「低い自由度を好む人」です。(中略)逆に、自由度の高い依頼をチャンスと捉え、「好きなようにやっていいんですね?」とやる気になる人が、「具体⇔抽象」の往復の世界に生きる「高い自由度を好む人」です。(62p)

上流の仕事というのがまさに「自由度の高い」仕事で、下流の仕事が「自由度の低い」仕事です。これらのどちらかを快適に感じるかで、その人が上流の仕事に適した人か、下流の仕事に適しているかが判断できます。(68p) 

つまり、情報の受け手の適性を見極めてコミュニケーションをとる必要があるということです。情報の伝え手はそれに合わせたアウトプットが求められます。そもそも、情報の受け手に期待するという行為は、その対象が変化した場合(マネジメントする対象が変わったり、新規顧客を開拓したりする時)のリスクがでかすぎます。変われるのは自分。それが悩みを減らす近道なんだと思います。

 

具体的にはどうしたらいいか?

思考力の話なので一朝一夕にはできません。しかし日々意識することで着実に力をつけることができると確信しています。それは僕自身が3年前のポンコツの状態から少しは進化したという経験から感じることです。

では、具体的にはどうしたいいのでしょう?

 

1.マインドマップを使ってみる

例えば、マインドマップなどで鍛えるのも効果的だと思います。マインドマップはまさに抽象と具体の階層の話ですね。このテクニックは枝葉まで描ききらないと気持ち悪い、逆に枝葉をどんどん伸ばしたい、という創作意欲みたいなものがモチベーションになるから楽しく、自然にできると思ってます。仕事場でも、頭がごちゃごちゃになると利用します。

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2.システム思考の本を読んでみる

システム思考とは、何と何がどのように作用しているかという仕組みを理解して、問題を構造する力です。この思考は伝えたい内容の全体像の解像度をより高めることで、相手に合わせた階層で伝えることができる力が身につくと思います。逆に、ここがきちんと整理できていないと、頭のいい人からの問いにちゃんと答えられないという実感があります。

システム思考でオススメの本は下記です。システム思考のシの字も知らない僕でも非常にわかりやすかったです。

なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方

なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方

 

 

3.本や映画、芸術に触れる

これは細谷さんの引用の方が説得力があるでしょう。

どうすれば、こうした抽象化思考をうながすことができるのでしょうか。多種多様な経験を積むことはもちろんですが、本を読んだり映画を見たり、芸術を鑑賞することによって実際には経験したことのないことを疑似体験することで、視野を広げることができいます。そうすれば、「一見異なるものの共通点を探す」ことができるようになり、やがてそれは無意識の癖のようになっていきます。

 

ということで、明日も本を読んで映画を見てインサイド生活を続けていこうかと思います。

 

◆本ブログで紹介した本

具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ

具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ

 

 

なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方

なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方