理想の睡眠のために知っておきたい7つの技術(参考書籍:最高の脳と身体をつくる睡眠の技術)

習慣としての睡眠

仕事のパフォーマンスと身体の健康状態は相関関係にあります。というか仕事のパフォーマンスの重要な資本として、身体があります。考えてみれば当たり前のことなんですが、少なくとも僕の20代の生活はそれをよく理解しておらず、それが31歳の今の生活にも影響を与えています。

「身体の健康」をベースに生活を構築しようと思ったとき、今の当たり前を見直して、新しいリズムに再構築する必要があります。しかし、それはとてもハードルが高い。習慣を簡単に変えられるなら、身体の健康状態なんて気にすることなくもっと仕事がパフォーマンスしているはずです。

 

習慣を変えるためには、次のステップが必要です。

 

(1)その習慣を身につけることで得られる報酬を理解している(≒身につけないリスクを理解している)

(2)その習慣を小さくてもいいから始める

(3)その習慣により実際に得られた報酬を理解している

(4)続ける

(5)頭で考えなくても実行できるようになる

(※)習慣が阻害されたときに、それを検知して対策を打つ

 

だいたい(2)のステップで離脱することが多く、これを三日坊主と呼びますが、実は(1)のステップを軽視しているからだと思います。誰かに聞いたから、とか誰かに言われたからなどと言った薄い説得材料では長続きしません。なぜなら、習慣化するためには何かを諦める、やめる、という選択の連続なので、それが仮に誘惑の強いものに晒されたときに簡単に阻害されてしまうからです。

「睡眠」に関しては、特に理解が薄いのだと思います。睡眠は、おかげさまで自然なライフサイクルの中でその欲求が訪れます。しかし、だからこそ意識して睡眠をしている人はいない。意識して睡眠を整えようという人はかなり少ないのが実態だと思います。

当然睡眠不足だと日中の活動がつらい・・とかで睡眠時間の確保をしっかりする動きをしている人は多いと思いますが、どちらかというと後手を踏む作業です。賢い人は、自ら睡眠をコントロールする力を身に着けなければなりません。

 

理想の睡眠とは?

そのためには、理想の睡眠の姿を、まず頭できちんと理解しておかなくてはなりません(習慣化(1)のステップ)。

ニュースアプリや情報サイトでは、よくこういったコンテンツを目にしますが、下記の本が、説得力のある情報がよく取りまとめられていました。

 

■『最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』、ショーン・スティーブンソン

SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術

SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術

 

この本がどういった技術を推薦しているかは、目次を見れば一目瞭然です↓

<本書の構成>
1章 睡眠は人生のすべてを左右する
2章 睡眠ホルモンを自らつくりだす
3章 電子機器の使い方を見直す
4章 カフェインの門限は午後2時
5章 体深部の温度を下げる
6章 午後10時〜午前2時のあいだに眠る
7章 腸内環境を整える
8章 最良の寝室をつくる
9章 夜の生活を充実させる
10章 あらゆる光を遮断する
11章 熟睡したいなら運動するしかない
12章 寝室にスマホを持ち込まない
13章 余分な脂肪を落とす
14章 快眠をもたらす最高の飲酒法
15章 最高の睡眠は寝るときの姿勢で決まる
16章 睡眠のためのマインドフルネス入門
17章 サプリは本当に必要か
18章 早起きで脳の働きを最大化する
19章 マッサージは睡眠に効く
20章 最高のパジャマはこれだ
21章 身体を自然に触れさせる 

 

ここでは、「説得力があって実行したほうが良いと思った」✕「大幅に生活習慣を変えずに実行できそう」が合致する技術を紹介します。

 

厳選 7つの「すぐできる」技術

1.午前6時から午前8時30分のあいだに太陽光をあびる

2.就寝90分前にはブルーライトを遮断する

3.コーヒーは午後2時まで

4.午後10時〜午前2時のあいだに眠る

5.午前中に運動する

6.週に2日、ウエイトトレーニングをする

7.アラームにスマホを使用しない

 

解説 7つの「すぐできる」技術 

これらを補足する前に、関連するホルモンを紹介いたします。

■睡眠に関連するホルモン

セロトニン:幸福感や満足感をもたらす一助になる物質。95%が消化管でつくられる、メラトニンの広報担当者。
メラトニン:熟睡を促すホルモン。光を浴びた量に大きく左右される。
コルチゾール:生体のリズムを日々管理する副腎ホルモン。睡眠のサイクルに欠かせない。メラトニンと反比例の関係にある。
ドーパミン:注意力を高め、意識を覚醒させる。獲物を探す、先がどうなるのかを知る、ということで分泌される。
アデノシン:アデノシン受容体の結合が一定レベルに達すると、とたんに身体が眠気を催す。
カフェイン:アデノシン受容体と結合できるという特異な性質がある、半減期は5〜8時間
1.午前6時から午前8時30分のあいだに太陽光をあびる

他の項目にも言えることですが、大前提として「遺伝子」とは書き換えに数千年〜数万年の歳月を要するということがあります。人間の歴史を振り返ると、農業を始めたのが1万年前、電気を使い出したのが数百年前、夜行型の人間が生まれたのも最近の話です。

つまり、我々がベストパフォーマンスを出すためには、農業革命よりも前の「狩猟採集民」時代の生き方を再現するのが良いということにもなります(極論ですが)。電気のない時代は、基本的に太陽のリズムに合わせて寝起きをしていました。そうでないと、夜行生活に特化している他の動物に狩られるというリスクがあります。日中に動いて夜は休む。この当たり前のリズムは太陽に合わせた形で設計されてます。人間の仕組みもそうでいていて、太陽の光でホルモンが放出されたり、そうでなかったりするようです。

ここで関わるホルモンはメラトニンとコルチゾール。これらは反比例の関係にあって、コルチゾール優位だと活動的、メラトニン優位だとリラックスした状態になります。 

2.就寝90分前にはブルーライトを遮断する

これには観点が2つあって、1つは太陽と同じように光自体がホルモンの放出に関わっているということ。簡単にいうと日中と勘違いしてコルチゾールが働いてしまう。

もう1つは、ブルーライトを発する媒体(スマホ、PC、テレビ)は情報なので、「先がどうなるかを知る」ということに特化して作られているということです。つまり先に上げたドーパミンが放出されるということ。ドーパミンは注意力を高め、意識を覚醒させるホルモンなので、こいつが働き出すとと睡眠に適さない状態になります。

3.コーヒーは午後2時まで

これはアデノシンというホルモンが関係してます。仕組みとしては、コーヒーに含まれるカフェインという物質がアデノシンに構造上、非常に似ていて、アデノシン受容体と結合することができる、ということで説明できます。本物のアデノシンが結合すると、睡眠が誘発されるのですが、偽物のカフェインが結合すると何も反応が起きない。なので、カフェインは昼間に眠気防止として愛飲されているのですが、厄介なことにこいつが身体から半分以上消失するのは8時間かかるということです。なので、2時以降に摂取してしまうと、睡眠を阻害するということになります。

4.午後10時〜午前2時のあいだに眠る

これも1)で取り上げた「遺伝子、狩猟採集民のまま説」で説明できます。ご先祖がこういうリズムで生きてきたから逆らえないということですね。本書では、この時間のことを「投資タイム」と表現しており、

曜日に関係なく睡眠のリズムを一定に保つことこそがメリット

 だとしてます。多分、これが7つの中で一番むずかしいのですが、これは後で取り上げてみようと思います。

5.午前中に運動する

まず、「運動をする」ということが睡眠の質をあげるための条件としてあります。これも遺伝子説を考えると納得できるのですが、狩りとか採集とかは目的達成のために運動が必要不可欠のため、現代社会のホワイトカラーのように動かない生活というのは極めて例外だということです。運動は眠るために必要なストレスで、睡眠はその運動の見返りを最大化するために必要な作業らしいです。

実は、運動による身体の変化は眠っている間に起こる。眠っているときに、身体のためになるホルモンが大量に分泌され、いぜんよりも強い体にするための修復プログラムが発動するのだ。 

ここで、「午前中」となっているのは、午前中が向いているというより、夜が向いていないとうことのようです。運動すると、身体の深部の温度が高まります。そうすると、身体は活動状態だと錯覚しますので、やはり睡眠に適した環境ではなくなるということです。運動は絶対したほうがいいけど、夜は適さないよ、ということですね。 

6.週に2日、ウエイトトレーニングをする

 で、その運動の中でも有酸素運動よりもウエイトトレーニングが向いているようです。ホルモンの働きを最大化するという観点で有酸素運動が実は機能が弱く、ウエイトトレーニングは直接作用するということ。1週間に1回でも睡眠に対しては効果があるようなので、少しずつ習慣にしたいところです。

7.アラームにスマホを使用しない

 2.の項目に関連しますが、「寝室」✕「スマホ」は別の意味でも相性がよくありません。目に見えないので実感するのは難しいですが、「電磁界」なるものが睡眠ホルモンへの悪影響やがん細胞への影響があるとのことのようです。確かに、Wi-Fiや電波というのはここ数十年でめざましく発展をとげて、日常生活に常時あるものになったわけですが、これを百年経験したことがる人類はまだおりません。そう考えると、未知のリスクがあるかもしれないので、気になる方は今のうちから対策をしておくのが良いのだと思います。

家庭にある電化製品や電子機器からは、電界と磁界の療法が発生していて、その2つを総称して、電磁界と呼ぶ。電界は壁などの障害物で簡単に遮断されるが、磁界になると、壁や建物、それに人体まで簡単に通り抜けてしまう。

 

「華金」という文化が日本人の睡眠の邪魔をしている

 以上、「すぐできる」と銘打って紹介してきましたが、これだけのことを習慣にするには様々なハードルがあります。

特に、「4.午後10時〜午前2時のあいだに眠る」はほぼ実践できている人はいないのではないでしょうか。この時間まで仕事をしている人も多いでしょうし、この時間しか友人との会食や趣味に当てられない人もいます。つまりこれを実践するということは世の中のマイノリティに挑戦するということなので、これはハードルが高い。

更に、仮に信念が強く、実行力のある人で、週の大半は実践できたとしても、日本には「華金」という文化があります。ストレスの強い仕事から開放され、そのままの勢いでハメを外して飲みすぎたり、食べ過ぎたりする。これが1日あるだけで、翌日に「1.午前6時から午前8時30分のあいだに太陽光をあびる」を実行できないのは目に見えてますし、それが影響して午後10時に眠ることは難しいでしょう。なんとか月曜日までに体制を持ち直したとしても、また金曜日には崩れる。

このサイクルを断つためには、もし金曜日に会食を入れるとしても、18時前後など早くから始める。日をまたがないうちに家に到着する。を心がけるだけで睡眠に与える影響は違うかもしれません。華金自体をなくすといよりは、どちらもいいとこ取りできるように試していきたいと思います。(完)