仕事の質を高める「ディープワーク」って何?(参考書籍:大事なことに集中する)

仕事に向き合う原動力としての「没頭」

以前、上司から「なんでそんなに頑張れるの?」と聞かれた際に、うまく返答できませんでした。もしかするとその「頑張り」を承認するための質問だったのかもしれませんが、うまく返答できなかったことが頭の中に残りぐるぐるしていました。

瑣末な理由はいろいろ思い当たるのですが、いまいち芯を食ったものがない。

ただ、一つだけ間違いないと言えるのは、「何かに没頭していたい」という欲求です。幼少時代を振り返ってみても、目的が明確で集中して取り組んでいる時間はたとえそれが疲労困憊になろうが、難しい問題であろうが、やりきる力は湧いてきました。

そう考えると僕のテーマは「何かに没頭し続ける」状態をいかにつくるか、ということ。キャリア論ではよく「to be思考」と比較して「Being思考」と言われるものに近いかもしれません。

では、何かに没頭し続ける状態をどのように作れば良いのか。そのヒントになる概念が『大事なことに集中する―――気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法 』という本にありました。

没頭し続けるためのディープワーク

本書には、まず下記のように書かれています。

仕事(特に知的労働)では、ディープワークに費やす時間を増やすことは、頭脳の複雑な機構を、意義と充足感を最大限にするような方法で活用することだ。

まず、「ディープワーク」とは何か。相反する「シャローワーク」と比較してみます。

 

ディープワーク:あなたの認識能力を限界まで高める、注意散漫のない集中した状態でなされる職業上の活動。こうした努力は、新たな価値をうみ、スキルを向上させ、容易に真似ることができない。

シャローワーク:あまり知的思考を必要としない。補助的な仕事で、注意散漫な状態でなされることが多い。こうした作業はあまり新しい価値を生み出さず、誰にでも容易に再現することができる。

 

僕のような一般的なサラリーマンでいうと、誰でもこなせるようなタスクレベルの業務(顧客とのメールや社内チャット、情報共有を目的とした会議など)がシャローワークで、戦略を練ったり、目標を考えたり、新しい方法を考えたりするような業務がディープワークです。

ディープワークのメリットは、単にその行為自体が没頭していて幸せであるということのみならず、関連スキルを圧倒的に高めることで仕事の成果の最大化につながるということ。

仕事を大雑把に上記2つのワークで構成されているとした時に、下記のような方程式が成り立ちます。

 

ワーク(C)=ディープワーク(A)+シャローワーク(B)

 

本書では、(A<B)になっている現状から(A>B)にすることの大事さとその方法が描かれているので、その一部を紹介します。

 

ディープワークを実践するために

本書では、18の戦略でその方法が説かれてますが、個人的にこれはすぐにでも実践できそうだと思ったものを取り上げてみます。

1.仕事スタイルに合わせてディープワークを取り入れる

この方法では主に、①修道生活的な考え方(ひたすら引きこもる)②二方式の考え方(一定期間だけ引きこもる)③リズミックな考え方(習慣に組み込む)④ジャーナリスト的な考え方(空いた時間に取り入れる)の4つの方法が紹介されてます。

実践可能だと思ったのは③で、実際に実践している人も多いと思いますが、下記のようなものになります。

 

リズミックな方法:単純な一定の週間にすること。ディープワークにとりかかる時と場合を決めることに、リズムを作り出すこと。毎日ディープワークに取り掛かる時間を定めることでも実現できる。

 

例えば、朝一で1時間本を読むなどは優秀な経営層の方が実践しているとよく聞きますが、それはまさにこの方法かと思います。ちなみに、ビルゲイツなどは1年に1度必ず一切連絡のとれない引きこもり期間を設けるようで、これは②二方式の考え方になります。権力と自信があると実行できそうな気もしますが、なかなか現実的ではないですかね・・

 

2.最重要目標のためのディープワークに注ぐ時間を指標にする

先行指標は、いますぎコントロールできて長期的な目標にプラスの影響を与えるような行動を向上させることへ目を向けさせる。デイープワークに専念している個人にとって、そうした先行指標を見極めるのはたやすい。「あなたの最重要目標のためのディープワークに費やされる時間」である。

これはディープワークそのものを「習慣化」する最初のステップによいと思いました。何事も新たな習慣を取り入れる際の、最初の「飽き」や「挫折」を乗り越えることが一番難しいと思いますが、「注いだ時間」というわかりやすい指標を設けることでその進歩具合を確認できます。

あとは、その向かっている目標さえ信じることができれば安心して投資した時間の総量が進んでいればOKという認識でいて良いのかと思います。

 

3.自分の脳に休息を与える

意思決定は無意識の心に解決を委ねたほうがよい場合がある、ということの立証に着手した。これは。積極的に決定に取り組もうとすると、関連情報を詰め込み、それから他のことに取り掛かり、その間、潜在意識に塾考させるよりも「悪い」結果につながる、ということだ。(中略)意識的頭脳に休息時間を与えることで、無意識の心が極めて複雑な課題をも処理できるようになる、ということだ。したがって、一時休止の習慣は、必ずしも生産的な仕事の時間を減らすのではなく、多様な業務に対応できるようにしてくれる。

会社の上司が寝ている間に思考が進んでいるなどと、よく冗談交じりにいうのですが、僕自身もなんとなく実感するようになった考えです。根詰めて考えるよりも少し寝かした方が勝手に整理されて突破口が開ける時がある。困った時はこれを思い出し、冷静さを取り戻したいです。

 

4.自然の中で過ごすことが集中力を向上させる

科学的には、「注意力回復理論(ART)」という「自然の中ですごすと集中力を向上させる」という理論があるようです。どうやら、街中での車や人並みなどのない自然の中では、乗り切るべき難関はほとんどないため注意力を働かせる必要がない。ゆえに、本来集中すべきことに集中できるようです。

 

ワークの総量を増やすという考え方

そのほか、本書ではとくに、インターネット(特にSNS)に費やす時間を減らすことに大きくページが割かれていました。これはいわゆる「シャローワーク」を減らすことで「ディープワーク」を増やすという発想かと思いますが、個人的には、まだまだ「ワーク」そのものの総量をあげる必要があるんじゃないかと考えます。

 

先の方程式でいうと、AとBの構成比をいじるのではなく、Cそのものを増やすということです。これはCのワークをどう定義するかという話にもなってしまいますが、ともかくワーク以外の時間に費やしている時間があまりにも多い。

たとえば、テレビの時間や、晩酌の時間などはまだまだ減らせます。実際ストレス発散になっている部分もあるかと思いますが、過剰な気がしてます。

こういう考えは若干ワーカホリック的な響きがありますが、ワークのための学びを「ストレス発散」として捉えることができれば、いわゆる「仕事時間」の総量を増やしているのではなく、「没頭している時間」の総量が増えていると捉えることができるのだと思います。

そう考えると、学び方を工夫していくことがディープワークの総量を増やしていくことに直結していると思います。

 

余暇の過ごし方がカギ

最後に、こうした気づきを与えてくれた部分を引用しておきます。

例の男が学ぶべきことは何よりも、知的能力は連続した困難活動ができるということだ。つまり、知的能力は腕や足のように疲れることはない。必要なのは変化だけだー睡眠以外、休息はいらない。

 これは100年前の「自分の時間(べネット著)」という自己啓発本の引用らしいのです。知的能力は疲れない。ゆえに、疲れだと感じているのはあくまでも体の疲れであって、知的活動において没頭し続けることができるということ。

ただ、100年経っても、労働外の時間の使い方については進歩していない。それだけ難しい領域だと認識しながらも、余暇の過ごし方については「いかに没頭できるか?」をテーマにしていきたい。まさにこのゴールデンウィークはそれを試されているわけです。(完)

 

◆ブログで紹介した書籍

 

大事なことに集中する―――気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法

大事なことに集中する―――気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法