「戦略」や「スキル」を過剰に信頼してしまっていることに気づく(参考書籍:成功はランダムにやってくる!チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方)

「成功は”ランダム”にやってくる!」は名著

twitterでオススメされていて良さそうだったので気軽に手をとった「成功はランダムにやってくる!」を読み終えました。

結論として、個人的には2019年に読んだ中で最良の本となりましたので、その中で得た気づきを整理したいと思います。

成功は“ランダム

成功は“ランダム"にやってくる! チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方

  • 作者: フランス・ヨハンソン,池田紘子
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2013/10/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 まず、なぜ自分にささったのかと簡単に整理してみると

・元々行動第一主義だった自分にとって、それが論理的に正しいと後押しされる内容だった

・学術的な研究結果も取り入れられており、納得度が高い

・これまで触れたことのない考えが複数あった(本が落書きと付箋だらけになった)

・実際に行動に転用できそうな内容も多々あった

ことが挙げられます。(結論ファーストで読み進めたい人からすると、米国特有の回りくどいエピソードトークに疲弊するかもしれません・・)

 

成功はランダムにやってくる

まず、この本の出発点は次のような疑問になります。

よく練られた計画や素晴らしい「戦略」が、実は予定外の会合、偶然の出会い、ランダムな出来事、偶然、単なる幸運などの結果だとしたら?マイクロソフトやノキアなどの企業、世界的に有名な作家、莫大な利益を得た投資家、新発見をした科学者などの裏話に、私達が思っているよりもランダム的要素が多かったら?成功や失敗が、ほんの一瞬先の予定外の出来事に左右されるとしたら?

 簡単に言うと世の中のビジネス本で紹介されるようなきれいな戦略とかって、本当に成功に近づくんだっけ?本当はたまたま何じゃないの?という出発点です。

本書の結論を言ってしまうと、それは「たまたま(ランダム)である」ということになります。なぜか。

 

知らぬ間にルールが変わる「予測不可能な世界」

ビジネスの世界では連戦連勝というは極めて難しい。実際のケースでも挙げられるものは少ないのではないでしょうか。企業の平均寿命が短くなってきているのも、よりその傾向が強くなっているという一つの証拠になります。

それは大前提として世の中の事象は予測不可能であるからです。特にビジネスにおいては、変数が多すぎて予測することは今後も一切不可能と本書では言い切っております。

一方で、その対照として挙げられるのがスポーツやチェスの世界ですが、この世界ではセリーナ・ウィリアムスのように十数年も王者に君臨するということが現実に起こっております。

ビジネスとスポーツでは何が違うのか?それは、背景にあるルールが不変なものか、可変なものかの違いにだと指摘します。

テニスはルールが変わらないから、徹底的に戦略的に対策をとることができる。ルールは人が決めているから変わりません。変わった場合は王者が陥落するケースは多々あります。フィギアとか水泳とかの種目でルールの変更があり上位の選手層が変わったことは記憶に新しい。

一方でビジネスの世界では、ルールは市場原理でいかようにも揺れ動く。昨年のベストプラクティスを今年応用したからといって成功するわけではないということが、このあたりから説明が付きます。しかも、その変化のスピードが年々早まっている。どんどん予測不可能な世界になっているということです。

第一に、どの企業や戦略が成功するかを予測することは不可能である。第二に、成功した企業から、なぜ成功したのか、どうすれば同じように成功できるのかという一般的な教訓を探し出すのは難しい。

 

サピエンス本来の脳の仕組みが成功パターンを欲しがっている

にもかかわらず、なぜ人は戦略的思考や他社のベストプラクティスの情報は欲しがるのか。例えばインサイドセールスの領域においても、そのパイオニア企業のセミナーやノウハウに飛びつく人が多く、一種の「流行り」みたいな現象が起きています。

それは、我々の脳がそのように「パターン認識」するようにデザインされているからのようです。友達の顔を覚えるのも、思い出を整理するのもパターンの中で行われるように、脳が好きな認識方法らしいです。(※ちなみに、なぜ脳がそのようになっているかも面白いです。↓)

誤ったパターンが真実だと真実代償が正真正銘のパターンを信じる代償よりも小さい場合、自然の選択は誤ったパターンの方を好むだろうと説明した。

 戦略は「ある方向に動くこと」にこそ価値がある

では、あれだけ重要だと言われており、ビジネスマンとして必須のスキルだと考えられている「戦略思考」って必要なのか?一生懸命ビジネス本を読むことも、無駄なのか?と嘆きたくなる流れではありますが、下記の通りそうではないようです。

戦略とは、本質的には「解決策」を見つけることではない。成功はランダム性や偶然の結果だからだ。もっと大事なのは、ある方向に動くことである。実はどの方向に向かうかはそれほど問題ではない。

 戦略は行動を促すことにこそ価値があるとします。これこそが本書の後半で語られる、成功を引き寄せるためのポイントなのですが、とにかく行動、まず実践という思想です。

特に、戦略が効くのは、組織で戦う場合です。人は、共通の思想がないと束になって戦えません。『サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福』にも、サピエンスが食物連鎖の頂点に君臨したのは、「虚構(宗教や神話などのストーリー)」を集団で共有できるようになったからだとしてます。戦略はもしかしたら広義の宗教のような存在なのかもしれません。組織が共通の目的に向かい、協調して一定方向に進む。その動機付けこそがが戦略を立案する最大の価値なんだと本書は強調します。

 

「同等確率の原則」という恐ろしい原則

本書では、戦略だけではなく、テニスでは最重視されるような「実力」ですら、成功の一因にはならないとします。「実力」は「スキル」と言い換えてもいいかもしれません。

実力は、時間と労力を集中させる方法を見つけるためのものであり、成功するためのものではない、と言いたいのである。成功の要因についてはその他のランダムで複雑なエネルギーが鍵となる。

それは、「同等確率の法則」で説明されます。同等確率の法則とは、例えば実力のある研究者が論文を書く際に、一発で世の中に大きな影響を与えるものは必ずしもできないと言うものです。何度も繰り返しサイコロを振るようなもので、年齢や経験にかかわらず、たくさん書けば書くほど革新的な論文が生まれる確率は高くなる。実力があると認められている研究者はそれだけ論文の量を世の中に発信しているから一定の確率で、認められるに値する論文も生まれているわけです。

企業にしても、科学者にしても、芸術家にしても、目的ある賭けをする場合の勝率はほぼ同じなのである。

 この原則が正しいのであれば、我々はとにかく多くの行動を起こさなければならない。量をこなさなければならない。本書ではこれを「目的ある賭け」と呼んでいます。

 

行動したときに起こるチャンスに気づく

そして肝心なのが、行動した結果同等に起こりうるチャンスに対して確実に気づくということです。なぜそれが肝心かというと、一般に見逃しがちだからです。なぜ見逃しがちかというと、我々が戦略的に物事に取り組みすぎており、そのとおりにいかないことに関しては脳内で優先順位が低く、エラーだったり異常値として認識されてスルーされるからです。

しかし、チャンスはエラーや異常値、驚きの中に埋まっている。それにきちんと気づいて、さらにそこにリソースを投入できるか。本書ではこれを「倍賭け」すると表現してますが、一定のリスクをとって行動を深められるか、ということになります。場合によっては、当初目論んでいたこととは逸れたり、当初目論んでいたことを諦めたりしなくてなりません。しかし、それができるかどうかで、成功の可否が決まっているかと思うと、私達はもう少し世の中の出来事に対して、客観的な態度だったり、アンコントーラブルなものだという謙虚な姿勢を身につける姿勢が必要なのかもしれません。(完)

 

◆本ブログで紹介した書籍

 

成功は“ランダム

成功は“ランダム"にやってくる! チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方

  • 作者: フランス・ヨハンソン,池田紘子
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2013/10/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

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