子供が「決める力」を伸ばすための2つの取組み(参考書籍:戦略子育て 楽しく未来を生き抜く「3つの力」の伸ばし方)
「決める力」が求められる時代
先日我が家に新しい家族が一人増え、新しい生活が始まりました。
それを言い訳に読書量も圧倒的に減少していたんですが、そろそろ取り戻さなきゃなという思いでブログを更新しております。本日は、個人的にタイムリーな「子育て」に関する本を取り上げたいと思います。
まず、どんな子供に育ってほしいか?を考えることは以下の2つの作業に分けられます。
①これからの時代にはどんな価値観や能力が求められるか?または必要か?
②それを身につけるためにはどんな経験や思考が必要か?
まず、親である僕たち自身がこれらに対する答えを持っていなくてはなりません。子育てを考えることは、そのまま自分自身の成長を考えることをほとんど一緒なんだと思います。仕事ができる人が子育てに没頭する理由も、常に自分自身にフィードバックがかかる面白さがその背景にある気がします。
なので、繰り返しになりますが、親として「これからの時代がどんな時代になるか」を考え続け、「それに必要な能力や価値観はなにか?」といことを、まず自身で思考・経験を重ね続けることが最も大事なのかと。
この本ではその一つの見解として、これからの時代には「試行錯誤力」が求められるとし、その要素を下記の3つに定義しています。
・発想力 :常識に囚われず新しい発見をし、それを探求できる力
・決める力 :選択肢を拡げ絞るために、調べて考えることができる力
・生きる力 :失敗にめげず楽しく前に進み続けることができる力
ここでは、ビジネスや私生活で特に必要な「決める力」について深ぼっていきます。
「決める力」がなぜ重要か
「決める力」が求められる背景としては、VUCA(Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ))という言葉に代表されるように、現代が「答えがない時代」であることが挙げられます。それ故に、「事前にしっかり計画をして、それを着実に実行する」というやり方ではなく、実行して改善する「トライ&エラー」の方法論が取られる時代です。「決めてやって変える(決める)」のスパンが短いため、意思決定の総量が増えます。
以前の日本社会では「決める」という作業は組織のトップやリーダーにのみ求められる能力でしたが、これからは意思決定単位が細分化され個人毎に必要な時代になります。組織のトップやリーダーが必ずしも「正解」の選択肢を選べるわけではないからです。
逆に「決められない」人材は「誰かが決めたことをひたすら実行する人」になるため、(それはそれで必要な人材かもしれませんが)仕事を楽しむということから遠ざかってしまいます。
「決める力」を育てる上で必要な態度
世の中には自分で決めることを避けたがる人が存在します。その多くの場合がリスクを避けたいという欲求に起因します。先日audibleで聞いたメンタリストDaiGoさんの「後悔しない超選択術」では意思決定のスタイルは5つに分類されると紹介されてました。
・合理的意思決定 :論理的に選択する
・直感的意思決定 :データよりも感覚を重視する
・依存的意思決定 :他人の意見を重視する
・回避的意思決定 :結論先延ばしにする
・自発的意思決定 :考えるより結論を急ぐ
これらのうち「依存的」「回避的」な思考の癖がある人は決めること自体に対する態度を変容させなくてはなりません。これらは幼い頃から繰り返し身につけてきた思考の癖です。もしかしたら何らかのトラウマや親とのコミュニケーションで癖がついたのかもしれません。
子育てという観点で注意しなければならないのは、子供のピュアな意思決定に対して親が「でも・・しなさい」といったコミュニケーションで、意思決定スタイルを強要することにもなりかねないということです。
VUCAの時代においては、成功は数多くの失敗の上に成り立ちます。1つの意思決定による挑戦の結果が失敗だったとしても、あくまでも成功までのプロセスに過ぎません。 そう考えると、賞賛されるべき行為は、「成功という結果」ではなく、自分で決めた実行したという「挑戦」自体にあります。親がこの観点の大切さを見失い、結果ばかり に反応してしまうと、失敗を恐れる人になってしまいます。挑戦を称賛し、挑戦を推奨し続けられる親であることが最も大事なのかもしれません。(そしてそれを自身が一番体現しているのがベスト)
「決める力」を伸ばすための2つの取組み
『戦略子育て 楽しく未来を生き抜く「3つの力」の伸ばし方』では、「決める力」を伸ばすために興味深い取り組みがいくるか紹介されてましたので、特に面白いと思ったものをピックアップしてみます。
(1)遊びを与えず子どもたちをヒマにすること
子供と遊びは切っても切れない関係かと思いますが、そんな遊びに関するメソッドです。今の時代は、子供が自発的に遊びを考えるのではなく、スマホやゲームなど大人側が準備してしまう遊びがとにかく山のようにあります。つまり、「何をして遊ぶか?」ということを考えて決める作業は奪われていると解釈することもできます。
何をして遊ぶかを決める能力
少し話は逸れますが、大人になると暇な時間によって心や体の健康を乱す人が続出します。暴飲暴食をしてしまう、余計なことを考え続けて心を病んでしまう、他者批判ばかりしてしまう、といった現代病は主に「暇だから」です。暇と向き合って、正しくポジティブなエネルギーに変えられることを遊ぶを通して実現する必要がある。「遊ぶ」といのは想像以上に難しい能力なんだと思います。
遊びの天才といえば、お笑い芸人の松本人志さんがすぐに思い浮かびます。日曜の深夜に放送される「ダウンダウンのガキの使い」は長寿番組ですが、様々な遊びを作っては実行しての繰り返しです。あれを何十年も繰り返しているのですから只事ではないのですが、そんな遊ぶ力はおそらく子供時代に身に着けたものではないかと思います。
暇と制約が遊びを考える能力を育てる
松本人志さんの子供時代にあったものは、「制約」です。金銭的にもそうですが、スマホや娯楽施設などの遊びの選択肢が今と比較すると極めて少ない時代です。
そんな「暇×制約」といった環境が、考える力を育て、何に時間を使うかを「決める力」を育てたのではないかと想像します。
・遊びとは自由な独立した行動である。強制されるものではなく、何かのために行うものでもない。ゆえにその第一条件は、ヒトにヒマ(=自由な時間)があることである。
・遊びの根源は、面白さ、である。面白さ自体は定義できない。ただし、面白くあるために遊びには適度なルール(=制約)が存在する。
(2)「脱ワンワード」なコミュニケーション
「脱ワンワード」とは何かは後述いたしますが、その前に「決める力」を身につける上でのコミュニケーション能力の重要性について、本から引用させていただきます。
決める力には2種類あります。個人で決める力とみんなで決める力です。第1章で述べたように、これから求められることは小チームが高速で試行錯誤を繰り返すこと。そのときに必要なのは、素早くみんなで決める力なのです。
みんなで決めるためには、4つのステップが必要です。①自分で考える、②相手に伝える、③相手から聴く、④話し合う、の4つです。つまり、②伝えるや③聴くといった「コミュニケーション」は、決める力の重要な一部なのです。
ハイコンテクストな日本の家庭
コミュニケーションの中で、僕自身も苦労したことが②相手に伝える、というステップです。特に日本人にとっては、訓練されづらい能力なのかもしれません。
日本はハイコンテクストな文化だと言われます。(※ハイコンテクスト:ハイコンテクストとは、コミュニケーションや意思疎通を図るときに、前提となる文脈(言語や価値観、考え方など)が非常に近い状態のこと。民族性、経済力、文化度などが近い人が集まっている状態。)
その要因として、日本が世界でも稀な単一民族であるということだけではなく、③聴く力が高いことにも注目したいです。聴く力が高いので伝えることをサボるわけです。察する力が強いので、言外のことを伝えることが冗長だったり藪蛇になったりします。生活の場においては、前提や背景を削除して、短い文章で伝えることのメリットの方が多いのです。
しかし、ビジネスや難しい課題に向き合っている場合はそれでは通用しません。論理的かつストーリー(前提や背景)を駆使したアウトプットが必要不可欠になります。主語や前提が抜けていたりするコミュニケーションでは伝わりません。厄介なのは、①自分で考える工程が秀逸にもかかわらず、②伝える工程が下手くそなので、受け手に勘違いされてしまうケースです。これにより考える力自体にも自信をなくし、決める力が劣化していきます。そうならないためにも、幼い頃から伝える訓練をすることが大切です。
脱ワンワードとは?
「脱ワンワード」とは、何かをお願いする時に「お水!」とか「来週!」、「嫌だ!」などのコミュニケーションのことです。家族間ではこれで成り立つことが多いですが、家族外では難しい。しかし、家族間コミュニケーションが大きく割合を占める幼少期においては、家族のなかで伝える技術を身につけなくてはなりません。
そのためには、まず親自身がローコンテクストなコミュニケーションを取ることが求められます。その上で、「察しの悪い親になること」。これは仕事でも取り入れている方もいるかと思いますが、わかっているけどわけっていないフリをするということ。それにより、子供は伝える努力をします。
加えて、「他の大人とコミュニケーションをとる頻度を増やす」、という方法もシンプルで良さそうです。よく仕事でもマネジメントをしているメンバーに対して、「僕ではなくて、●●さんがいると思って話してみてください」と言ったりしますが、この意図ととしては前提や背景を理解していない人に対しても伝わるようなアウトプットをしていただくことです。伝え手自身がきちんとつながりを理解しているかのチェックにもなるのですが、これはそのまま子育てにも使えそうだなと。一つの経験を伝えるにも、なんでもわかっている親に伝えるのと、友達の親に伝えるのでは子供も自然と伝え方を変えるはずです。
長くなってしまいましたが、親としては、①決める力を奪う機会の排除と、②決める力を身につける機会の提供、しかできないと思いますので、上記のような方法論を取り入れつつ、しっかり子供の成長に向き合っていきます。(完)
◆ 本ブログで紹介した書籍