営業マンが早い段階で「マーケティング」を経験すべき2つの理由(参考書籍:隠れたキーマンを探せ!)

キャリア形成において職種は複数経験しておきたい

キャリアを考える時に、「軸」という言葉はよく使われます。それは、第三者にキャラクターや職歴がわかりやすくなるような「ラベル」的な意味であったり、自分が思考を整理して希望の会社を見つけるためだったり、様々な意味があります。

その「軸」は最終的に「どんな業界で働きたいか?」や「どんな職種として貢献したいか?」といった業界や職種などに集約されていきます。それがビジネス界における共通言語なので、そうなるだろうと思います。

職種といえば、セールスやマーケ、経理や人事など業界を超えた「役割」ですよね。ひとつの役割を深く突き詰めれば「プロフェッショナル」に、様々な役割を横断的に経験していると「ゼネラリスト」になります。

 そのなかでも多くの人が最初のキャリアとして選ぶ職種が「セールス」ではないでしょうか。なぜならそもそも世の中にセールス職がたくさん必要、ということと、すでにたくさんいるから育成できる、という2つの要素があるからだと考えます。

セールスはセールスとして数年、長ければ数十年のキャリアを歩みます。少なくとも僕の前職の製薬業界では、そういう見通しでした。

しかし、ここ数年、セールスこそ他職種を経験すべきだと強く思うようになりました。自分自身が、ほかの職種を経験したことによる視野の広がりを実感したこともそれを支えていますが、活躍している人の話を聞いていると、各々のブレークポイントみたいなものが「職種を超えた経験」によるものであることが少なくないからです。

そして、セールスが経験すべき職種はマーケティングです。それを、上記のような「成功している人がそうだから」という抽象的な見解ではなく、昨今のセールスが置かれている具体的な状況を鑑みて強く感じるようになりました。データに基づくセールスのあるべき姿が記載れている『チャレンジャー・セールス・モデル 成約に直結させる「指導」「適応」「支配」』の続編で、2018年12月に出版された『隠れたキーマンを探せ! データが解明した 最新B2B営業法』はまさに、そのようなことを実感する書籍です。

訳者あとがきにも下記のようなことが書かれています。

本書の趣旨はセールスという仕事にマーケティングの考え方を持ち込むことだと置き換えて考えることができる。

なぜ、セールスにマーケの考えが必要なのか、本の内容を見ていきながら整理してみたいと思います。 

セールスがマーケを学ぶべき2つの理由

 まず、セールスとマーケをどう捉えているかについて、この本の訳者あとがきに、とてもわかりやすい比較がありました。 

両者のギャップはセールス、マーケティング、ブランディングの各機能における柔軟性の違いによって生じている。セールスは柔軟性が高く、それぞれのお客様に合わせた個別対応をすることが期待されている。マーケティングはセールス機能と比較すると柔軟性が低く、個別対応ではなく、特定のターゲットセグメントを決めた上で、ターゲット群に共通するメッセージを届けることが期待される。(中略)その観点に立てば、セールスは1to1であり、マーケティングはセグメンテーションであり、ブランディングはマスという概念で括ることができる。

(整理メモ)

セールス:1to1、柔軟性が高い、川下なので最終工程でテーラーメイドが必要(具体的)

マーケティング:セグメンテーション、柔軟性が低い、川上なのでセグメントごとのアプローチが必要(抽象的)

 

では、セールスにマーケティングの考え方が必要というのはどういうことでしょうか?2つの観点から考察してみたいと思います。 

 

1)1to1では、売れなくなってきた

 まず、この本が何を言っている書籍なのか?を簡単に下記の引用でまとめておきます(あとがきでこのようなサマリは本当にありがたい)。

・営業現場の変化は、販売活動ではなく、顧客の購買活動から起きている

・購買決定に関わるのは平均5.4人であり、多様化する顧客の購買集団への対応が求められる(★1)

・関係者の多様性が増すと、購買集団の機能不全が起きてしまう

・集団内の対立は購買プロセスの37%到達時点でピークを迎える一方、サプライヤー候補選定は57%到達時点で行われれることで機会ロスをもたらしている(37と57のギャップ)(★2)

・早期に顧客と接点をもち関係構築するためには、顧客関係者5.4人のうち「誰と」話を進めるかが重要であり、その選定が花形販売員と平均販売員の差を分ける

・顧客関係者には7つのタイプがあり、大別するとモビライザー(動員者)とトーカー(話し好き)に分かれる

・優秀なセールスはモビライザーをターゲットとし、平均セールスはトーカーをターゲットとする

 

★1の部分に注目していただきたいのですが、本書では顧客が何かB2Bの商品を導入するために、意思決定が必要な人数が平均で5.4人関わっている、というデータを紹介しています。つまり、リードジェネレーションやナーチャリングプロセスを経て、ようやくキーマンと繋がってからもなお、複数人に対する啓蒙・提案が必要だということ、すでに、セールスの領域でさえ1to1のアプローチではないということを意味してます。

これに対して必要なのは、「メンタルモデルの再構築」。5.4人に共通して存在しているメンタルモデルを破壊し、自社商品を導入するための新たなメンタルモデルを再構築するということ。これには、最終工程の小手先だけのセールステクニックでは太刀打ちできません。上流から下流まで「幅広い一貫した対応」が必要です。

何よりも重要なのは、サプライヤーの営業、サービスおよびマーケてイング上の各種コミュニケーション全般における、幅広い一貫した対応である。これに実効性を持たせるには、時間や忍耐、徹底した繰り返しのほか、経営幹部の変わらぬサポートが必要となる。 

セールスの立場からすれば、マーケサイドが考えた販売手法を徹底することが成果最大化につながるということ。であればこの工程に関与しないということは、影響の範囲を狭めせるということになります(もちろんそれを徹底するだけでも十分価値があると思いますが)。これがセールスもマーケティングの考えを学ぶべき一つ目の理由です。 

 

2)セールスが顧客の意思決定に介入するタイミングが遅くなってきた 

★2の「37と57のギャップ」の部分について、大変重要な箇所なので下記の通りもう少し具体的に説明している部分を引用します。 

サプライヤーの観点からは、少なくとも、57%という数字によって次のことがわかる。モビライザーの特定や動機付けを可能にするのは、販売員による対面接触ではなく、顧客ともっと早い段階で繋がるための幅広いマーケティングチャネルである。(中略)顧客は放っておけば、サプライヤーへの関与をできるだけ遅らせようとする。(中略)そこで、「指導」の出番となる。顧客とくにモビライザーに、販売員と話さなくてはならないと感じさせるのだ。それは「コマーシャルインサイト」だ。

このまま鵜呑みにするならば、セールスが関与している時点ではマーケットにおける購買可能性がある顧客は相当目減りしているということです。本来、商品を売るという観点に立てば、その上流時点でボトルネックがあるということですから、いかにセールスがスキルをあげて受注率をあげようが、注がれている水の量が減っている以上、その貢献度は相対的に低下していきます。

これは、セールス:マーケの必要構成比がマーケに傾くと捉えることもできます。 実際に、本書では、マーケで考えたコンテンツ(コマーシャルコンテンツ)をセールスは徹底して理解して実行していくことの重要性が説かれています。

しかし、セールスが単にマーケの戦略や方針の受け皿になると、適切なフィードバックがかかりません。マーケが現場まで見にいくというプロセスももちろん重要ですが、基本的に数の多いセールスのインプットを使わない手はないと思います。コマーシャルインサイトの質をあげ、事業としても早くPDCAを回していくという観点で、セールスがマーケの考え方を身に付けるのは重要です。これが理由の2つ目になります。 

最後に

以上、セールスがマーケを学ぶべき理由を見てきました。

つまりは、セールスもマーケも、マーケットから顧客化までの全プロセスを思考できることが大事なんだと思いますが、実際は他人事といった感じで浸透させることは難しい。

少なくとも、全体を見ようと意思のある人間が、それを思考できるきっかけをつくるためにも、事業全体でセールスファネルの各工程の可視化をしておくことが大切なんだと多います(自分の事業はいまようやくそのフェーズなんで、この作業の大事さを今噛み締めてます)。(完)

 

◆ブログで紹介した書籍

隠れたキーマンを探せ!  データが解明した 最新B2B営業法

隠れたキーマンを探せ! データが解明した 最新B2B営業法

  • 作者: マシュー・ディクソン,ブレント・アダムソン,パット・スペナー,ニック・トーマン,?田昌典,リブ・コンサルティング,三木俊哉
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2018/12/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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チャレンジャー・セールス・モデル 成約に直結させる「指導」「適応」「支配」

チャレンジャー・セールス・モデル 成約に直結させる「指導」「適応」「支配」

  • 作者: マシュー・ディクソン,Matthew Dixon,ブレント・アダムソン,Brent Adamson,(序文)ニール・ラッカム,Neil Rackham,三木俊哉
  • 出版社/メーカー: 海と月社
  • 発売日: 2015/10/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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仕事の質を高める「ディープワーク」って何?(参考書籍:大事なことに集中する)

仕事に向き合う原動力としての「没頭」

以前、上司から「なんでそんなに頑張れるの?」と聞かれた際に、うまく返答できませんでした。もしかするとその「頑張り」を承認するための質問だったのかもしれませんが、うまく返答できなかったことが頭の中に残りぐるぐるしていました。

瑣末な理由はいろいろ思い当たるのですが、いまいち芯を食ったものがない。

ただ、一つだけ間違いないと言えるのは、「何かに没頭していたい」という欲求です。幼少時代を振り返ってみても、目的が明確で集中して取り組んでいる時間はたとえそれが疲労困憊になろうが、難しい問題であろうが、やりきる力は湧いてきました。

そう考えると僕のテーマは「何かに没頭し続ける」状態をいかにつくるか、ということ。キャリア論ではよく「to be思考」と比較して「Being思考」と言われるものに近いかもしれません。

では、何かに没頭し続ける状態をどのように作れば良いのか。そのヒントになる概念が『大事なことに集中する―――気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法 』という本にありました。

没頭し続けるためのディープワーク

本書には、まず下記のように書かれています。

仕事(特に知的労働)では、ディープワークに費やす時間を増やすことは、頭脳の複雑な機構を、意義と充足感を最大限にするような方法で活用することだ。

まず、「ディープワーク」とは何か。相反する「シャローワーク」と比較してみます。

 

ディープワーク:あなたの認識能力を限界まで高める、注意散漫のない集中した状態でなされる職業上の活動。こうした努力は、新たな価値をうみ、スキルを向上させ、容易に真似ることができない。

シャローワーク:あまり知的思考を必要としない。補助的な仕事で、注意散漫な状態でなされることが多い。こうした作業はあまり新しい価値を生み出さず、誰にでも容易に再現することができる。

 

僕のような一般的なサラリーマンでいうと、誰でもこなせるようなタスクレベルの業務(顧客とのメールや社内チャット、情報共有を目的とした会議など)がシャローワークで、戦略を練ったり、目標を考えたり、新しい方法を考えたりするような業務がディープワークです。

ディープワークのメリットは、単にその行為自体が没頭していて幸せであるということのみならず、関連スキルを圧倒的に高めることで仕事の成果の最大化につながるということ。

仕事を大雑把に上記2つのワークで構成されているとした時に、下記のような方程式が成り立ちます。

 

ワーク(C)=ディープワーク(A)+シャローワーク(B)

 

本書では、(A<B)になっている現状から(A>B)にすることの大事さとその方法が描かれているので、その一部を紹介します。

 

ディープワークを実践するために

本書では、18の戦略でその方法が説かれてますが、個人的にこれはすぐにでも実践できそうだと思ったものを取り上げてみます。

1.仕事スタイルに合わせてディープワークを取り入れる

この方法では主に、①修道生活的な考え方(ひたすら引きこもる)②二方式の考え方(一定期間だけ引きこもる)③リズミックな考え方(習慣に組み込む)④ジャーナリスト的な考え方(空いた時間に取り入れる)の4つの方法が紹介されてます。

実践可能だと思ったのは③で、実際に実践している人も多いと思いますが、下記のようなものになります。

 

リズミックな方法:単純な一定の週間にすること。ディープワークにとりかかる時と場合を決めることに、リズムを作り出すこと。毎日ディープワークに取り掛かる時間を定めることでも実現できる。

 

例えば、朝一で1時間本を読むなどは優秀な経営層の方が実践しているとよく聞きますが、それはまさにこの方法かと思います。ちなみに、ビルゲイツなどは1年に1度必ず一切連絡のとれない引きこもり期間を設けるようで、これは②二方式の考え方になります。権力と自信があると実行できそうな気もしますが、なかなか現実的ではないですかね・・

 

2.最重要目標のためのディープワークに注ぐ時間を指標にする

先行指標は、いますぎコントロールできて長期的な目標にプラスの影響を与えるような行動を向上させることへ目を向けさせる。デイープワークに専念している個人にとって、そうした先行指標を見極めるのはたやすい。「あなたの最重要目標のためのディープワークに費やされる時間」である。

これはディープワークそのものを「習慣化」する最初のステップによいと思いました。何事も新たな習慣を取り入れる際の、最初の「飽き」や「挫折」を乗り越えることが一番難しいと思いますが、「注いだ時間」というわかりやすい指標を設けることでその進歩具合を確認できます。

あとは、その向かっている目標さえ信じることができれば安心して投資した時間の総量が進んでいればOKという認識でいて良いのかと思います。

 

3.自分の脳に休息を与える

意思決定は無意識の心に解決を委ねたほうがよい場合がある、ということの立証に着手した。これは。積極的に決定に取り組もうとすると、関連情報を詰め込み、それから他のことに取り掛かり、その間、潜在意識に塾考させるよりも「悪い」結果につながる、ということだ。(中略)意識的頭脳に休息時間を与えることで、無意識の心が極めて複雑な課題をも処理できるようになる、ということだ。したがって、一時休止の習慣は、必ずしも生産的な仕事の時間を減らすのではなく、多様な業務に対応できるようにしてくれる。

会社の上司が寝ている間に思考が進んでいるなどと、よく冗談交じりにいうのですが、僕自身もなんとなく実感するようになった考えです。根詰めて考えるよりも少し寝かした方が勝手に整理されて突破口が開ける時がある。困った時はこれを思い出し、冷静さを取り戻したいです。

 

4.自然の中で過ごすことが集中力を向上させる

科学的には、「注意力回復理論(ART)」という「自然の中ですごすと集中力を向上させる」という理論があるようです。どうやら、街中での車や人並みなどのない自然の中では、乗り切るべき難関はほとんどないため注意力を働かせる必要がない。ゆえに、本来集中すべきことに集中できるようです。

 

ワークの総量を増やすという考え方

そのほか、本書ではとくに、インターネット(特にSNS)に費やす時間を減らすことに大きくページが割かれていました。これはいわゆる「シャローワーク」を減らすことで「ディープワーク」を増やすという発想かと思いますが、個人的には、まだまだ「ワーク」そのものの総量をあげる必要があるんじゃないかと考えます。

 

先の方程式でいうと、AとBの構成比をいじるのではなく、Cそのものを増やすということです。これはCのワークをどう定義するかという話にもなってしまいますが、ともかくワーク以外の時間に費やしている時間があまりにも多い。

たとえば、テレビの時間や、晩酌の時間などはまだまだ減らせます。実際ストレス発散になっている部分もあるかと思いますが、過剰な気がしてます。

こういう考えは若干ワーカホリック的な響きがありますが、ワークのための学びを「ストレス発散」として捉えることができれば、いわゆる「仕事時間」の総量を増やしているのではなく、「没頭している時間」の総量が増えていると捉えることができるのだと思います。

そう考えると、学び方を工夫していくことがディープワークの総量を増やしていくことに直結していると思います。

 

余暇の過ごし方がカギ

最後に、こうした気づきを与えてくれた部分を引用しておきます。

例の男が学ぶべきことは何よりも、知的能力は連続した困難活動ができるということだ。つまり、知的能力は腕や足のように疲れることはない。必要なのは変化だけだー睡眠以外、休息はいらない。

 これは100年前の「自分の時間(べネット著)」という自己啓発本の引用らしいのです。知的能力は疲れない。ゆえに、疲れだと感じているのはあくまでも体の疲れであって、知的活動において没頭し続けることができるということ。

ただ、100年経っても、労働外の時間の使い方については進歩していない。それだけ難しい領域だと認識しながらも、余暇の過ごし方については「いかに没頭できるか?」をテーマにしていきたい。まさにこのゴールデンウィークはそれを試されているわけです。(完)

 

◆ブログで紹介した書籍

 

大事なことに集中する―――気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法

大事なことに集中する―――気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法

 

 

『インターネット的(糸井重里)』を読んで、インターネット登場前後を考えてみる(参考書籍:インターネット的)

まさに未来予知的な本

糸井重里さんが書かれた『インターネット的 (PHP文庫)』という本を読みました。

この本はインターネット創世記の2001年にインターネットの登場により世界がどう変わるのかという視点で書かれている本ですが、帯にも「まるで、予言音の書」と謳われている通り、今年書いたと言われても驚かないくらい鋭い洞察と予知的なことで満載です。

例えば、下記のようなサービスを現代に当てはめてみると非常に面白い。

 

・レシピ共有サイト

いまおかずの例を出しましたが、家庭料理というのは、インターネットにとても向いている情報だと思いますね。(中略)現物は届けられなくても、おいしい肉じゃがのレシピがおうそわけできたら、ごく短い期間で、日本中の肉じゃがが美味しくなるというような可能性があるわけでしょう。

これは現在では「クックパッド」というサービスで、インターネットの力によって爆発的に広がっている概念ですよね。

 

・有料ブログ

本の「価値の本体」は情報であると考えれば、もしかしたら、本の中でほんとうに必要な情報はたった1ページであるかもしれません。(中略)そしたら、たった1ページで価格30円という本があったっていいかもしれません。

今では「NOTE」というサービスで、誰でも記事を書いて有料で販売できます。

 

・ツイッターなどのSNS

ある思いが、まだ熟していないままに、仮の言葉でまず結晶化していくのがインターネット的で、ネットに触れ始めた時、ぼくはどこを面白なぁと思いました。

糸井さん自身が、インターネットの魅力として上記をあげてますが、まさにこういった魅力が全世界的に受け入れられ、今ではツイッターブログという形で、特に文字を書く専門家ではなくても、生煮えの思いや主張を世の中に発信する時代になりました。

 

このように、当時の「インターネットでこんなことができるかも」というアイデアが現実に多くの人が利用するサービスとして具現化しているということを僕らは答え合わせのように楽しむことができます。

糸井さんはなぜ、未来を想像する力が強いのかと考えながら読んでいたのですが、一つ、これじゃないかと気付くことがありました。

それは、「人間本来の欲望や行動特性をよく観察し、理解しようとしているから」ということです。

 

人間本来の姿に目を向ける

そう思ったのは、後半に書かれているこの文に目を通した時です。

インターネットそのものが何か素晴らしい魔法のわけではなくインターネットは人と人、人の考えや思いを繋げるだけですから、これによって社会が豊かになっていくかどうかは、それを使う「人」が、何をどう思い、どんな考えを生み出すかにかかっているのではないでしょうか。

つまり、インターネットというテクノロジーや新しいツールにばかり目を向けるのではなく、あくまでも「人」に焦点を当てて、インターネットはその「人」の可能性を拡張したり、喜びみたいなものを増やすという観点で捉えるというスタンスでいるということかと。

この本では、そういった人間本来の姿を前提にいろいろなことが「こうなるんじゃないか」という想像が広がります。人間の本質を常に考えるから、新しい道具を手に入れたら人間はこうするんじゃないか、こうなっていくのでは、と未来予知的なことができるのだと思います。

 

ここでは、「インターネット的」という考えを通じて、2001年当時、人間にどのような変化が生まれると考えられていたのか、簡単にまとめておきます。そうすることで、当たり前だと思っていた価値に気付けるような気がします。

 

「インターネット的」な概念で世の中はこう変わる

1.情報がリンクする

 ・「問い」のほうにも、「答え」のほうにも、たくさんの付属する情報があるが、それが有機的につながりあう。

 ・周辺情報だとか、リンクの先のリンクにまで延々と深く繋がってゆく。

 2.情報をシェアする

 ・先んじて情報をシェアする。そうすると、「ありがとう」の代わりに、「では、わたしも別の情報シェアしましょう」とシェアとリンクが絡み合っていく。なんとも快適な連鎖構造ができていく。

 ・情報をたくさん出した人のところに、情報がドット集まっていく。

3.価値の優先順位付けが多様化する

 ・価値が多様化するというよりは、価値の順位づけが多様化する。価値の順位組み替えは個人の自由になっていく。

 ・いままでの大人が持たずに済んできた「大きな価値のプライオリティ」の悩みが、大人も持つようになる。

4.情報全体でやりとりできるようになる

 ・時間や面積という不動産価値にとらわれる必要がないおかげで、三時間の対談を三時間すべてだしてしまうことができる。

 ・ある思いが、まだ熟していないままに、仮の言葉でまず結晶化していく

5.自前で祭りができる

 ・いままでのようにビジネスしたい人に頼まれて、「余ったお金で、大きいお祭りをつくってね」と言われるのではなく、祭りをつくるエネルギーが先になって、商売をしたい人を巻き込むことができる

6.お金がなくても何度でも実験ができる

 ・トライアルとエラーの実験を、短い時間のうちに何度も繰り返すという方法は、あちこちで行われていく

7.ビジョナリーな企業が選ばれる

 ・その企業の実現んしたい社会像に、まるで選挙の投票をするように、「買い物」とするようになる

 8.悩む前に行動

 ・「やりたければやる」「選びたいものがあったら、もっといいものを持つよりも、すぐにやる」というのが、インターネット的

 

最後に

こうしてみると、ビジネスシーンにおいて大事だよねといわれていることは、結構インターネット的な思考の影響が大きいことがわかります。

例えば、トライ&エラーは仕事の進め方において一般的であるし、企業自体が強烈なビジョンを持って、さらにそれを公開して採用や広報に利用するなども一般的な方法です。

ですが、これらが元来当たり前ではなく、インターネットというテクノロジーによって、人間という生き物がそれを利用することによって生じたことなんだってことは今一度理解しておく必要があるかと思います。

印刷機や蒸気機関車などの革新的なテクノロジーが普及するようになったタイミングでもおそらく同じような動きはあったのかもしれません。それぞれ、知識の普及、もの・人ともに空間移動力の向上など、もしかしたらインターネットよりも大きなインパクトだったかもしれません。

しかし、それらは僕らにとってはすでに当たり前で、うまれる前からあるもの。インターネットはそのぎりぎりラインといったところです。ただ、そのテクノロジーが僕らにもたらす恩恵と変化を適切に捉えることが、まだまだインターネット自体の可能性を広げたり、新しいテクノロジーの普及の際に、まるでこの本のような予知的な思考でいられるポイントなのだと思います。

ゴールデンウィークはこういった普段しない思考の幅を広げられるから楽しい。(完)

 

◆本ブログで紹介した本

インターネット的 (PHP文庫)

インターネット的 (PHP文庫)

 

 

本嫌いにオススメしたい読書術が学べる5冊

仕事の面白さと読書量は相関関係にある

最近、面白いビジネス本が多く出版されているせいか、どんどん良い本が見つかって積読状態の本が増えてます。できるなら、土日も平日も外に出かけずに本を読んでいたいというくらい、楽しみな本が今目の前にあります。

 

そんな中ふと、「3年前まで全く本を読まなかった自分が、なぜこんなに読書にはまっている(はまることができた)のだろう?」という問いが頭に浮かび、シンプルな解に行き着きました。

それは「読書が仕事を面白くすると気づいたから」です。

僕の解釈では、「仕事が面白くなること」と「読書にはまること」は相関関係にあります。両者は双方にプラスの影響を与え、相互に強化ループが働きます。場合によっては「仕事を面白くする」とまでのポジティブな変化は生まれなくとも、「仕事を辛いものにし続ける」という状態から脱することはできると考えており、いずれにせよプラスの働きが得られることは、この3年間でよく学びました。

 

ここではその「仕事」⇔「読書」の相関について、下記の2点に分けて整理してみます。

1)「読書にはまる」→「仕事が面白くなる」の働き

2)「仕事が面白くなる」→「読書にはまる」の働き

 

1)「読書にはまる」→「仕事が面白くなる」の働き

まず、読書が持つ仕事に対する価値について、下記の4つに因数分解してみます。

 

① 「知識」が身につく

② 「考える力」が身につく

③ 「自信」がつく

④ 「モチベーション」が高まる

 

-①:「知識」 は解説不要だと思います。ビジネス本や教科書などを手に取る目的としては、たいてい知識を習得することが当てまります。知らないことに対して知ろうとする、面白そうな知識に触れることで世界を広げる、など読書=知識というのはほぼ当たり前の事実かと。

 

-②:「考える力」 は先日Audibleで拝聴した『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』でとてもわかりやすく記載されてました。

こちらでは、「東大生が先天的に地頭がよいわけではなく、本を読む方法を工夫しているから地頭がよくなる」という趣旨の元、「考える力」を身につけるための本の読み方が解説されています。要は、本を読む時に単に情報をインプットするのではなく、自分なりの仮説をもって著者の主張を深ぼったり、抽象化したり、反論したり、疑問をもったりして、能動的に読むこと(読者になるのではなく、記者になる)で、考える力を身につけるということ。

つまり、本を読むだけではなく、仮説を持って本を読めるかどうか次第でその価値が変わるということになりますが、それは後に出てくる「直面している課題に関する本を選ぶ」ということで担保されると考えています。

 

-③「自信」 と ④「モチベーション」 はセットなんですが、①と②が強化されることで③が生まれ、その結果④に至るという解釈です。最終的に「仕事が面白くなる」には自信とそれに伴うモチベーションが高まることによる影響が大きく、逆にそこに至らなければ単なる娯楽(読書している時間そのものを楽しむということ)に過ぎないと考えます。

なので、その知識やロジックなど読書を通じて学習することで「ここまで勉強したからもう大丈夫だ」「ひとまず知らないということはない、あとはどうアウトプットするかだ」という状態にもっていくことが大切だと考えています。

 

2)「仕事が面白くなる」→「読書にはまる」の働き

今度は逆に、仕事が面白くなることで「読書量」が増える働きについて考えてみます。

僕自身、最初はほぼ強制的に読書時間をとって、よくわからん知識を詰め込むという作業でした。なので、これが簡単に機能しだす働きとは考えてません。

しかし、 これも本の選び方と読み方を工夫すればどんどん矢印の濃い働きになっていきます。

 

はまりやすい本の選び方

仕事が面白くなっている状態をここで定義しておくと、「適切な難易度で適切な挑戦ができている状態」と考えることができます(フロー体験)。その状態では何が存在しているかというと、「適切な課題」です。高すぎず低すぎずの課題(問題)がある状態が最高です。

その状態で大切な本の選び方は、直面している課題に近い本を選ぶということ。

なぜなら、先にも書きましたが、本を読み始める時には、自分なりの仮説を持つことが非常に大切になります。しかし、自分事ではない領域の仮説は読む前に少し頭を使わなくてならないし、中断した後に再開した時に、再度それを引っ張り出してこなければならないのでリズムが悪くなりがちです。

一方で、直面している課題とはあれこれ形式だって事前に考える時間なんてとらなくても、風呂場でも通勤電車でも思考を巡らせている(仮説を数通りもっている)ので、そんな手間は必要ありません。

 

周囲を見ていると、プライベートの時間を使ってまで仕事のことを考えたくないのか、あえて現在の自分から遠い本を選んでいたりします。レイヤーが高い人の本や未来思考の本に向き合うのももちろん大切だとは思いますが、僕はそういった類の本は常に「直面している課題に対する本」と並行して読書することを条件にしてます。

なぜならそういった本は、足元のことではなく未来のことなので実行できる領域が狭い上に、共感できる部分が少なく時間がかかるからです。

それよりも、「今」の課題に向き合ったほうがコスパがいいし、読書が好きになっていく力が強いと思います。

 

はまりやすい本の読み方

とはいえ、はまりやすい本を選び続けるのはなかなかに難しい。時には期待した内容ではないことだって多々あります。それを加味すると、読書の一定量は必要になってくるわけですから、読書という行為自体を楽しめるとより良いということになります。

その上で、何が大事かというと自分の中でのルーチンを作ることかと思います。世の中には読書法にまつわる本はたくさんでてます。僕が参考になった本だけでもざっとこのくらいあります。

 

知的戦闘力を高める 独学の技法

遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣

レバレッジ・リーディング

「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書

メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)

 

詳しくは本を読んでもらうことが一番いいとは思いますが、僕が実践しているのはその中で下記に落ち着きました。

・本に落書きしまくるということ

・最後に振り返ってもなお面白いと思う所に付箋をはること

・付箋の箇所をevernoteに転記すること

一見めんどくさいということかもしれませんが、このルーチン化された行為がなかったら多分飽きてると思います。

 

更に、これらの内容をアウトプットする場があったら、はまるループは増します。ここでも直面した課題に関する本を読むメリットが活きます。必然的に本の内容を咀嚼し自分の言葉でアウトプットするからです。

僕は職場だけでは頻度が不安定なので、その分をこのブログで担保するようにしてます。

 

最後に

以上、簡単にまとめようと思ったのですが、結構長くなってしまいました。

3年前まで全く(本当にまったく)本を読まなかった自分が、土日も読書をするほど好きになるとは思いませんでしたが、振り返ると、「仕事」、つまり今自分が一番没頭しているもの、思考のウェイトが重いもの、への向き合い方が変わったからというのが一番大きいかもしれません。

しかし、繰り返しになりますが、その向き合い方を変えてくれたのが読書だということは間違いありません。鶏が先か卵が先かではありませんが、仕事がつまらんという人は無理やり10冊くらい本を読んでみるというのも現状を変えるきっかけとしては最高だと思います。

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◆ブログで紹介した書籍

「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書

「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書

 

  

知的戦闘力を高める 独学の技法

知的戦闘力を高める 独学の技法

 

  

遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣

遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣

 

 

レバレッジ・リーディング

レバレッジ・リーディング

 

 

メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)

メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)

 

 

B2Bセールスが今こそ読むべき『THE MODEL』という教科書(参考書籍:THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス)

THE MODEL の大衆化

2019年1月にB2Bセールスは一つの節目を迎えました。なぜなら、マルケト社の社長である福田さんの著書「THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス」が発売されたからです。

 

twitterなどのSNSでも話題になってましたし、ご存知の方も多いかもしれませんが、Saas系のセミナーやブログでは頻繁に出てくる「THE MODEL」というセールスのプロセスをパイプライン管理する概念を懇切丁寧に説明してくれる本です。

 

注目すべき3つの理由

なぜ「節目」という大げさな表現をしているかというと、

1)マーケティングなどの分野と比較して長らく遅れをとっていた「セールス×科学」の領域において、THE MODELの概念は画期的かつすでにある程度体系化されている

2)そのナレッジが日本語で書かれた書物を通して日本人誰でも理解できるようになった(コモディディ化)

3)よって、THE MODELに習って実行する企業が増えさらにナレッジが溜まっていく/改善されていく

ことが想定されるからです。

 

なぜ THE MODEL が優れているか

そもそもなぜTHE MODELの概念が優れているかということを整理したいのですが、その前にこの概念が分業制を前提としているということに簡単に触れる必要があります。

B2Bセールスのプロセスは、基本的には下記に分解できます。

 

・新しい顧客と接点をもつ(リードジェネレーション)

・顧客に自社商品の理解を進めてもらう(リードナーチャリング)

・顧客に商品購入を検討してもらう(セールス)

・実際に購入してもらう(オンボーディング)

・継続して購入してもらう(リテンション)

・もっと購入してもらう/別の商品を購入してもらう(アップセル・クロスセル)

 

この考えを細くなっていく漏斗に例えてファネル戦略と呼ばれてます。漏斗から生み出される成果物の総量を高めようということですね。 

 

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 分業制のメリット

マーケティングの考えと一緒で、基本的には母数である「顧客接点」を最大化し、実際に購入して顧客になってもらうまでの展開率を高めていくという作業ですが、その各工程を工場のように分解して機能別に担当する、ということが「分業制」の特徴です。

これによるメリットを5つに整理してみました。

 

1. 各工程の業務に集中できる

これまでのセールスは、自分で電話をかけて、自分でアポをとって、自分で訪問して、すぐに受注になる案件もそうでない案件も管理・メンテナンスしながら、また新しい顧客を見つけるために電話する・・という全行程を一人で担っていました。

しかし、THE MODELでは、それぞれの工程でそれぞれのノウハウがあり、使う筋肉も違うということを前提とし、それであれば各工程の業務に集中しようという発想です。

目の前の案件と新規顧客の開拓、この両方を一人でこなすのは時間がないことに加え、短距離と長距離を交互に走るようなもので、リズムが違う仕事なのでなかなか作業の効率が上がらない。分業すれば、同じリズムの仕事に集中することができる。(p20)

 

2. 研鑽ができる

一つの工程の業務に集中ができるということは、それだけその工程で研鑽ができるということです。

楽器の練習は最初は「リズム」だけ、次に「メロディ」だけ、という形でそれぞれの工程をとりあえずずっと練習することで洗練されていきます。しかし、セールスの世界ではそんなの御構い無しで、「全部いっぺんにやってみなはれ」でスタートします。これでは器用さや経験値で差が開いてしまうのは当然です。分業にすることで、まずは「商談設定すること」のプロフェッショナルになれますし、その業務に集中できるのでうまくなるのも早い。

 

3. 採用のターゲットも広がる

たとえ優秀だけど営業が未経験だからどうしようかな・・という採用の悩ましい場面でも、まずは比較的簡単な工程から始めようとできるため(一般的には前工程のインサイドセールスが育成機関の対象とされます)、採用の対象も広がります。ちなみに、営業が100%の戦力になるまでの期間を「ランプタイム」と呼び、その期間の圧縮=売り上げ向上とする考えもあります。

全行程を担うセールスと比較すると、その成長の早さを考慮して、分業制の方が「ランプタイム」が短くなるというのは自明ですね。

 

 

4. 顧客に価値提供できる

もしかするとここが一番重要かもしれませんが、自社の売り上げ拡張をするための生産性の向上ということだけではなく、顧客へ貢献ができるという観点です。

これまでのように1人のセールスが1つの顧客を担当するということは、そのセールスにとってのインセンティブがないと顧客への提案活動というのは滞ります。

例えば、売り上げ達成する見込みがあるセールスが保有している新規顧客は放置されがちかもしれません。しかし、分業制にすることでそういった顧客はすべてアプローチすべき顧客へと変換されます。

 

さらに言えば、顧客は「顧客が情報がほしい」と思ったタイミングでしか情報を受け取りたくありません。分業制はそういった顧客の状態を検知するのに適してます。逆に言えば、全行程セールスはセールスのリズムで顧客と接点を取りに行きますので、これとは逆行してしまっているということがわかります。

顧客は購買のプロセスを、自分が決めたタイミングで、自分が信じられる有益な情報を好みの方法で入手し、営業担当者に売り込まれることなく自分のペースで進めたい。そして、自分のことを理解してくれる企業から購入したいと考えている。すぐれた顧客体験は、価格や商品そのものよりも重要な意思決定の基準になっているのだ。(p48)

 

 

5. 個ではなく組織で戦える

これまで見てきたように、全行程セールスでは対応しきれなかった領域を組織全体で最適な配分をすることで底上げしようという考えのため、当然ですが組織で一つの売り上げや目標を追っていくという姿勢がカルチャーとして醸成されます。

セールスのポジションとして面接をしていると、「個人の目標をひらすら追いかけていて、顧客のためというより会社のために働いている気がした」ということをよく聞きます。それも、全行程を一人で担うセールスだとどうしても目標や視点が「自分の成績」ということに集約されがちだという構造的な原因があると思います。

しかし、分業をすることで、なぜ、なんのためにこの業務に取り組んでいるか?とうことを考える機会が増えます。そして、それをチーム内でディスカッションする機会も増えます。成功事例や失敗事例の共有、トークスクリプトやメールのテンプレの共有など、個ではなく組織で戦う意識がどんどん醸成されます。

これは、セールスのモチベーションを高める効果もあると思いますし、何よりもセールスが楽しくなると考えています。

楽しくなればセールスを目指す人も増える。そうなると、優秀な人が増え、またセールスの領域が面白くなるという好循環を生むはずです。

 

 

最後に

以上、ここでは分業のメリットに触れましたが、もちろん体制を整えるまでの苦労や、その旗振りをやりきる人材の問題など、課題も多くありますが、それ以上にここに向き合うことで得られるものが多いというのが今のところ僕の所感です。

 

そして、この本から得られるものはこんな程度ではありません。これまでのセールス活動の整理にもなりますし、漠然と考えていた事象がちゃんと問題としてフォーカスされ、その細部の打ち手や考え方まで記載があります。

BtoBセールスに関わる人、特にSMB市場(中小企業のマーケット)に向き合っている方は避けて通れない一冊かと思います。(これで2,000円かと思うと本がいかにコスパがよい投資かを実感します)

 

僕の会社のデスクにはこの本が当面置きっ放しになりそうな予感がしてます。

(以上)

 

◆このブログで取り上げた書物

THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

 

 

 

自分が使う「言葉」に素直になること(参考書籍:天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ)

僕は3年前に大手メーカーからベンチャーに転職し、それまで周囲が現場の営業職ばかりという環境から、マーケターや企画、エンジニア、そして営業職という多種多様な職種の人と働く環境にと様変わりしました。もちろん、キャリア背景も全然違い、特にコンサル出身の人や、ベンチャー生え抜きの人などは使っている言葉さえ理解できないところからセカンドキャリアが始まりました。

 

KPI、to be 、オペレーション、あるべき・・・

 

確かにこういった言葉は非常に扱いやすい。慣れるのは早かったです。自分が物事を整理するときにも使うようになりました。共通言語としては機能的だと思います。

今では、インターン生や別業界からの転職組に対して自分自身が、「すんません・・この言葉の意味ってなんですか?」と聞かれる対象です。

そんな中、北野唯我さんの「天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ」を読んでいてハッとする一節がありました。

 

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自分の言葉に嘘はないか?

 

そもそもな、言葉にはたくさんの嘘が混じっている。嘘というのは、ホンマは自分の言葉じゃないってことや。誰かから借りてきた言葉なんや。大人が使う言葉を見てみい。ほとんどの言葉は「他人がつくった言葉」なんや。

 

まずこの一節に目を通した時に、自分自身、確信犯的にこうした「他人の言葉」でごまかしている局面が具体的な映像として思い浮かんできました。

例えば、下記のようなケースです。

1)営業組織全体へのメッセージを伝える時

2)部下の課題に対する打ち手をあれこれ一緒に考えている時

それも、たいていの場合話のオチに使いがちだと気づきました。

「〜という状況なので、是非成功事例などあったら横展してみてください。」

「KPIに対して〜くらいショートしそうなので、各自そのGAPを埋めるための思考をお願いします」

結構あるなと。もちろんすべてが悪いわけではありませんが、自分で言葉を発していて空をきっているような感覚を覚えるときがあります。

 

「他人の言葉」を使ってしまっている場面

日々意味のないことはあまり発言したくない、自分で思ってないことは言いたくない、と思ってはいますが、「形式」を重んじる場合、もしくは「立場」を重んじる場合にこういった言葉(本書でいうと「他人の言葉」)を使っています。

先ほどの、1のケースだと「形式」を重視する場だし、2のケースだと「立場」を意識した場です。これらを大事にすると言葉の嘘が出やすい。

  

では、こういった「形式」や「立場」を重んじる場合は、なぜ他人の言葉を使ってしまうのか。

それは、自分の素直な思いを、過度に一般化し、「誰でも理解できるような言葉」や「誰からも批判されないような言葉」に変換してしまうからではないでしょうか。

本当は頭に思い浮かんだ、新鮮な言葉が一番伝わりやすいのに、自分の上司の目線、部下の目線、同僚の目線、全員に理解できるように言葉を変換してしまうことで、一人一人には深くささる言葉ではなく、全員がちょっとずつわかる言葉にグレードダウンする。

本書でも下記のように書かれています。

 

「なぜ、人が他人の言葉を使うか、わかるか?」

「なぜ・・、わかりません」

「それはな、楽やからや。圧倒的に。他人の言葉は便利や。自分が主語じゃないから、意思もいらない。究極的に、他人のせいにできる。」

 

「自分の言葉」を使えている場面

一方でこうした「他人の言葉」を使わず、「自分の言葉」を支えている場面はどんな時か。それは、新鮮な思考と同時にセットででてくる言葉ではないでしょうか。

例えば、

・チームメンバーと課題に対してディスカッションしている時

・部下の課題に対して上司であるという立場を忘れて、一緒に解決しようと四苦八苦している時

僕はこういった時には、カタカタは使わないし、むしろかなり辿々しい日本語を使っているような気がしますが、相手と相互に理解し会えるし、気づきも得られているような気がします。

 

こうして考えると、自分がその事象に対してどれだけ自分事として捉える事ができているか、自分の意思を込める事ができているかによって言葉の選択が変わる事に気づきます。逆に言えば、使っている言葉によって、自分でその真剣さや本気度を測る事ができるということでもあります。

 

そして著者は、こう言ってます。

 

「他人の言葉」では人の心は動かせない。

人の心を動かすのは「自分の言葉」だけだ。

 

だから、「他人の言葉」を使っている自分に気がつき、「自分の言葉」を使おうと。

 

天才も秀才も凡人も全て「自分の言葉」を大切にするべき

上記の「自分の言葉」を使おうというメッセージは、あくまでも本書で3つに分類される才能(天才・秀才・凡人)のうち、凡人に必要な「最強の武器」として紹介されています。

しかしこれは、天才だろうが、秀才だろうが、凡人だろうが、すべての人間に言えるのではないでしょうか。

 

天才は言われなくてもやっている

考えてみると、一般的に天才だと思われるような人は、意図的なのか、天然なのかわかりませんが、やはり自分の言葉を使っていると思います。決して賢そうな言葉回しでもなければ、理解できない芸術のような言葉回しでもなく、シンプルな言葉を使って自分の思いを表現する。

最近では、『動画2.0 VISUAL STORYTELLING (NewsPicks Book)』の明石ガクトさんや、『メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)』の前田裕二さんでそのようなことを感じました。(今気づきましたけど、どっちもNewsPicksBookですね)

だとすると、天才と凡人は何が違うのか。それは、意識か無意識かの違いかと思います。天才は無意識のうちに当たり前のようにできるが、凡人は意識しないとできない。

 

凡人も天才になれる?

本書の後半では、それぞれの人間が3分類にタイプ別されるという主張ではなく、自分の中に3分類のタイプが存在していると説明しています。

つまり、凡人も天才を飼っているし、天才も凡人を飼っているという事。

では、何が一体その差をわけるのかというと、「ストッパーとなる存在」を取り除く事ができるかどうかです。なかなかに抽象度の高い部分ではありますが、下記の説明がマジでわかりやすかったです。

 

夜中に、めちゃくちゃおもしいことを思いついて、メモった。明日すぐに発表しようと思う。ワクワクする。だども、翌朝見直してみたら急に「全然筋が悪そう」に見える。結果、昨日の自分がバカみたいで恥ずかしく思い、メモを削除する。

(中略)

実際、このときのプロセスっていのは、頭の中で、天才→秀才→凡人の三者が、順番にポコポコ出てきているんや。君の中にいる「天才」が思いついたアイデアを、社会的な基準やロジックで「良いか悪いか」を判断するのが、秀才や。そして最後に「恥ずかしい」とか「周りからどう思われるか」と感情で判断する。結果、やっぱりやめとこう、と凡人が出てきてしまう」(創造性→再現性→共感性というプロセスを経る)

(中略)

才能を活かせないのは、才能があるかないかより前に、「ストッパーとなる存在」を取り除くことの方がはるかに大事なんや。これが「本当の自分になる」ための方法論なんや。

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つまり、夜中のアイデアをどれだけ大切にできるか。昼間の論理性や共感性というストッパーに対するストッパーを飼うことができるか。突拍子もないアイデアかもしれませんが、それを殺さずに自分自身が面白いままアウトプットできるか。

天才はもしかすると、自分のアイデアを客観視したときの「共感性」がたまたま弱くて他の人が恥ずかしいと思うようなことをたまたまアウトプットしちゃっているだけかもしれませんが、それをできる人が圧倒的マイノリティだということ。であれば、恥ずかしくても殺さずに出してみよう、と。それが天才に一歩近づく手段なのかもしれません。

 

序盤で、ディスカッションの最中では「自分の言葉」を使えていると書きましたが、きっとそれも「夜中のアイデア」と変わりません。ただ新鮮だから、ぱっとでたものだから、他者に伝えるのが恥ずかしいという「凡人」の「共感性」によるストッパーが出現しないまま、「自分の言葉」によるアウトプットが「偶然に」できている状態だと言えます。

一方で、それを一晩寝かせて、改まって人に発表する、この間に自分の中の秀才や凡人にそのアイデアが殺される、もしくは「他人の言葉」にグレードダウンします。

アイデアはそのままアイデアとしてストックする。妙に考えすぎない。そして、煮詰めるときは共感性や論理性だけではなく、最初の状態をしっかり覚えておく。なんども最初に立ち返る。そのくらいやったほうが、最終的に質の良いアウトプットができるのではないかと思います。

 

自分の言葉に注目して、他人の言葉を使ってたらヤバいと気づく。

自分の新鮮なアイデアに対して、それを否定したり、バカにしている自分に気づく。

 

こういった意識の根底から見直そうと思える本はなかなかありません。これだから読書はやめられない。

 

◆このブログで紹介した本

天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ

天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ

 

部下に言いたいことが伝わらない2つの理由(参考書籍:具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ)

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皆さんは風呂に入っている時は何を考えますか?

何も考えずに鼻歌を歌っていますか?それとも、途中にしていた課題の続きを考え続けたりしてますか?また、今日の1日を振り返る時間に当てているかもしれません。

僕はといえば、その時の脳内シェアの高い「悩み」が頭に浮かび、その悩みについて自動思考が始まります。とはいえ、風呂場はリラックスしている環境のせいかその自動思考は比較的「楽観的」な思考で進み、案外いい感じの解決策が見つかったり、筋のよい論点を見出すことができたりします。(要は仕事をしているわけですね)

 

自分の言っていることが伝わらない

最近はその風呂場で考える「脳内シェアの高い議題」が、社内コミュニケーションであることが多めです。社内コミュニケーションとは上司とのそれと同僚やメンバーとのそれがあります。

 

僕自身も、「伝わらんなぁ」というフラストレーションを抱えていますが、 悲しいことに、思い入れの深いメンバーからも「とみざわさんの言っていることがわからない」と直接言われたり影で言われてたりします。今日はこの件について考えてみたいと思います。

 

なぜ伝わらないのか?

言っていることが伝わらない2つの理由

まず、言っていることが伝わらないというのは2つの観点に分けられます。

 

(1)具体的すぎてわかりにくい

(2)抽象的すぎてわかりにくい

 

この2つの観点を、営業マネジャーがメンバーに対して、営業手法を伝える場面で説明を試みてみます。下記のマネジャーの心の中のロジックをご覧ください。

 

____________________

売り上げ目標100万円を1ヶ月で達成しよう。

そうすることでその売り上げを来月の集客コストに回して集客目標を達成すことができるぞ。

そのためには、先月よりも30万円の売り上げUPを実現しなくてはならないから、これまでやってこなかった飛び込み営業で商談数を増やそう。

具体的には、100件の飛び込み営業が必要だ。

____________________

 

1.具体的すぎて伝わらない

まず、メンバーに対してミーティングなどで「今月は100件の飛び込み営業をしよう」と伝える行為が、「(1)具体的すぎてわかりにくい」に該当します。これは、なんのためにそれをやるのか?なぜその手法をとるのか?という背景や目的が不透明なため理解できないという構造です。

 

2.抽象的すぎて伝わらない

逆に、「来月の集客目標を達成する貢献しましょう」と伝える行為が「(2)抽象的すぎてわかりにくい」に該当します。今度は、具体的にはどうしたらいいのか?どのくらい頑張ったらいいのか?が明示されていないので理解できないということになります。(僕のわかりにくさはこっちが原因であることが多いです。情報のわかりやすさを生業とする営業マンとしては失格です)

 

たいていのコミュニケーションミスは上記の2点から説明できるような気がします。もちろん、単純に論理構成が悪くて支離滅裂というケースも多々ありますが、それも抽象から具体への降りてくる段階、もしくは具体から抽象にあがる段階での誤りやつながり不足だと考えると、やはり説明できます。

 

「適切な抽象度」は受け手によって変動する

また、この2種のどちらかのみが原因ということは少なく、多くの場合ミックスになっています。なぜそうなるかというと、コミュニケーションの受け手が完全に理解するためには、その受け手の抽象度と具体性のレベル感にフィットしたものを提供する必要があるからです。

 

そして、これを日常的にすべてのコミュニケーションで行うのは非常に難しい。特に、余裕のない時に関してはどうしてもこのような配慮をショートカットしがちになります(まさに期末を迎える今は僕はとてつもなく余裕がなく、その余裕のなさが周囲に伝わるほどでいつも反省してます)。故に情報の伝え手の論理が、受け手の理解を置いてけぼりにして、その受け手にとって抽象的すぎたり、具体的すぎたりして総論として「わかりにくい」となるのだと思います。

 

情報の受け手に期待しすぎている

さらに、受け手(部下や上司)はわかってくれるはずだ、という期待がよりコミュニケーションミスを生んでます。情報の受け手が優秀であるほど(ここでいう優秀とは抽象と具体の往復ができるという意味)そのミスが生まれるリスクが低くなるわけですが、組織で働く以上、階層によって情報の非対称性は発生します。それ故にたとえ優秀な人材からしても「わかりにくい」という事象が生まれます。

 

「相手に応じた抽象度」で伝える

なので、伝え手は相手の状況や相手の理解度に合わせてアウトプットする必要があります。これをサボってはいけない。また、これをサボって相手の理解に期待を寄せる行為は、ある意味理不尽であり、お互いの不信感を煽る行為です。

『地頭力を鍛える』で有名な細谷巧さんの著書『具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ』にはこのように書いてます。

状況と相手に応じてちょうどよい抽象度でコミュニケーションすることが重要です。「抽象的だからわかりにくい」ということがクッローズアップされがちですが、じつは「具体的すぎてわかりにくい」こともあるのです。(121p) 

 

具体と抽象を往復できる力を鍛えよう

では、そのようなコミュニケーションミスが生まれないためにはどうしたらいいか。

それは「抽象と具体の往復できる力を鍛え、より多くの情報の受け手に対して、適切な階層でアウトプットできるようになること」です。

 

もちろん、マネジャーである以上、メンバーの抽象化能力の開発を支援していくことも努力していきます。しかし、このあたりは向き不向きもありそうです。優秀なプレイヤーが全員マネジャーを目指すわけではありません。なので、その能力を強制するのもいかがなものかと思ってきました。細谷さんもこう言ってます。

「こんな感じで適当にやっといて」と言われて、いい加減な「丸投げ」だと不快に思う人は、具体レベルのみの世界に生きる「低い自由度を好む人」です。(中略)逆に、自由度の高い依頼をチャンスと捉え、「好きなようにやっていいんですね?」とやる気になる人が、「具体⇔抽象」の往復の世界に生きる「高い自由度を好む人」です。(62p)

上流の仕事というのがまさに「自由度の高い」仕事で、下流の仕事が「自由度の低い」仕事です。これらのどちらかを快適に感じるかで、その人が上流の仕事に適した人か、下流の仕事に適しているかが判断できます。(68p) 

つまり、情報の受け手の適性を見極めてコミュニケーションをとる必要があるということです。情報の伝え手はそれに合わせたアウトプットが求められます。そもそも、情報の受け手に期待するという行為は、その対象が変化した場合(マネジメントする対象が変わったり、新規顧客を開拓したりする時)のリスクがでかすぎます。変われるのは自分。それが悩みを減らす近道なんだと思います。

 

具体的にはどうしたらいいか?

思考力の話なので一朝一夕にはできません。しかし日々意識することで着実に力をつけることができると確信しています。それは僕自身が3年前のポンコツの状態から少しは進化したという経験から感じることです。

では、具体的にはどうしたいいのでしょう?

 

1.マインドマップを使ってみる

例えば、マインドマップなどで鍛えるのも効果的だと思います。マインドマップはまさに抽象と具体の階層の話ですね。このテクニックは枝葉まで描ききらないと気持ち悪い、逆に枝葉をどんどん伸ばしたい、という創作意欲みたいなものがモチベーションになるから楽しく、自然にできると思ってます。仕事場でも、頭がごちゃごちゃになると利用します。

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2.システム思考の本を読んでみる

システム思考とは、何と何がどのように作用しているかという仕組みを理解して、問題を構造する力です。この思考は伝えたい内容の全体像の解像度をより高めることで、相手に合わせた階層で伝えることができる力が身につくと思います。逆に、ここがきちんと整理できていないと、頭のいい人からの問いにちゃんと答えられないという実感があります。

システム思考でオススメの本は下記です。システム思考のシの字も知らない僕でも非常にわかりやすかったです。

なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方

なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方

 

 

3.本や映画、芸術に触れる

これは細谷さんの引用の方が説得力があるでしょう。

どうすれば、こうした抽象化思考をうながすことができるのでしょうか。多種多様な経験を積むことはもちろんですが、本を読んだり映画を見たり、芸術を鑑賞することによって実際には経験したことのないことを疑似体験することで、視野を広げることができいます。そうすれば、「一見異なるものの共通点を探す」ことができるようになり、やがてそれは無意識の癖のようになっていきます。

 

ということで、明日も本を読んで映画を見てインサイド生活を続けていこうかと思います。

 

◆本ブログで紹介した本

具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ

具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ

 

 

なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方

なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方

 

 

【Audible】と【オーディオブック】を2ヶ月間使ってみた

紙の本 vs オーディオブック

僕はモノに対しては思い入れの強い方で、所有しているだけで満足したり、それを眺めている時間が結構好きだったりします。

つい先日つけた洗面所のカーテンはずっと眺めてられますし、ニューバランスの靴、黒い服、なるべく存在感を消したシンプルなタオルも気に入ったものは所有しているだけで満足感が得られます。

そんな中でも、本は特別です。

本という物質を保有していること自体に満足感を覚えているのです。

これは小学校の時に食べられなかった梅干しが今では大好物のように、また最初は苦手意識を持っていた異性を好きになってしまうように、本を読むことがめんどくさくて仕方なかった幼い頃の反動で、その面白さに気づいてから「嫌い」が「好き」に変化したからだと考えています。

本の価値とは

さて、本の価値とはざっくり下記に分けられるのではないでしょうか?

・無形の価値

 ①学びの価値:本の内容を自分の知識に置き換えるという価値 

 ②遊びの価値:本の内容を楽しんでいる時間自体の価値

・有形の価値

 ③記録の価値:自分のメモを残したりできる価値

 ④所有の価値:モノとして希少性や表紙のカッコ良さ(見栄え)の価値

 

これを、各種ツールに置き換えてみます(あくまで僕の現時点の主観です)。

 

◆紙の本    :①②③④

◆デジタルの本 :①②③

◆オーディオの本:①②

 

こう見ると、紙の本がやっぱり良い気がします(もちろん逆に持ち歩きに不便とか、購入が遅いとか、検索機能がないとかデメリットもたくさんある前提で)が、オーディオでも満足できる本やテーマもあるのでは?という思いから、2か月ほど真面目に使ってみましたので、その感想を記録しておきます。

 

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オーディオブックを使ってみた

僕が使ってみたのは下記2つです

1)Audible(オーディブル)

www.amazon.co.jp

2)オーディオブック

pages.audiobook.jp

ビジネス書に限定して言えば、ぱっと見で本のラインナップが異なると感じたためまずは両方とも使ってみました。今のところどっちがというのはあまりなく、読みたい本がある限りは使っていこうと思ってます。

どちらか?となると、課金システムは前者が従量課金(コイン制)、後者が固定課金(定額制)なんでそのあたりとラインナップが判断軸になると思います。

どのように使うのが良いか?

紙の本との位置づけで言えば、「用途に合わせて使い分けできそう」ということです(普通)。

じっくり読み込んだり、がっつり学びを得ようとする場合は、やっぱり紙がいいと思います。

以前にも書きましたが、自分の意見や感想をぶつけながら読み進めるためには紙が効率的だと思うからです。後述しますが、オーディオはメモ機能が弱い(わずらわしい)、知識をストックとして残すことに向いていないというのが今のところの機能を使ってみての感想です。

※知識のストックに関しては、下記で取りまとめています↓

www.dokuryou.com

 用途1:ゆとりのない通勤中

僕は残念ながら毎日満員電車にゆられて通勤しているため、この時間の有効活用方法について色々試しておりました。

結果的に今一番良さそうなのが、「インプット」と「思考」の時間に当てるということです。

そのインプットは、インターネットラジオサービスの『radiko』なども「インプット情報を偏らせない」という意図では良いと思いますが、オーディオブックはそれを凌いでよいと感じています。

 

用途2:ゆったりとした風呂

冬場なので言えることかもしれないですが、この時期の風呂は最高です。日本人で良かったと1風呂で4回は思います。

この時間も、知的インプットの時間にはあっていますね。仕事の課題に向き合っているテーマというよりは、もう少し広いテーマ、たとえば歴史や人類学、映画やエンターテインメントに関わる本などのテーマの方が、リラックスしたい風呂の時間と相性が良さそうな気がします。

 

用途3:イヤイヤやるランニング

冬場なのでこの時期のランニングは家を出る一歩目が億劫でたまりません。しかし、ランニングで健康を維持できる、という利点に、知識をインプットしながら、という利点が加わり一石二鳥になると、他の行動をとる状態と比べて「ちょっと行ってくるか」と自分をマネジメントしやすくなりました。

※ちなみにそんな時はワイヤレスイヤホンが絶対いいですね。ランニング時はもはや必須だと思います。コードありだと煩わしくてかないません。

 

以上の3用途でインプットをする限り、オーディオという手段が最も有用になります。基本的に「ながら聞き」ですね。他の作業をしてるけど耳が余っている作業をしている時に、インプットができるというのは本当にありがたいです。

 

どんな本がいいか?

再読する予定の本

僕は「過去すでにインプットした本の中で、再読の価値がある本」にフラグを立てて管理しています。本棚にはそれ用の一角がありますし、evernoteには星が3つ(★★★)のフラグをつけています。

その本がオーディオブックにあったら大当たりです。繰り返し聞くことで血肉となり、よりアウトプットに役立ちますよね。

あんまり興味のないテーマ

興味のない本は、紙の本をなかなか買わないですし、じっくり机で向き合うための時間の優先順位と下がります。そのようなテーマでも、オーディオブックなら気軽ですし、思いの外面白くて世界が広がるかもしれません。

僕は、あんまり興味のない経営者の本を一冊聞いてみて、その経営者の他の本も買うくらい好きになったという経験もしました。

紙の本では優先順位が下がるくらいの位置付けにある本を選定するのも一つの手だと思います。

またその場合は、コイン購入制のAudible(オーディブル)よりも定額読み放題サービスのあるオーディオブックの方が向いているかもしれません(2019年1月時点)。

 

要は、めっちゃ好きだってわかっている本と、食わず嫌いしている本の両極端に向いてそうという意見になります。

 

TIPS

使ってみて気づいた雑多なことを書いておきます。

音読のスピード調整がその時のコンディションによる

これは脳みその出来や疲れに依存しているかもしれないのですが、機能聞いていた速度で今日の朝聞くと速すぎて理解が追いつかないという時がたまにあります(逆もしかり)。

僕の場合は、ランニングしている時はめっちゃ早くて、逆に寝起きの朝は遅めにして聞いています。それでも最低1.4倍とかでは聞けると思うので、基本的には早く聞いた方がいいです。風呂に入っている時はゆったりした気分にするためにも、遅めの方がいいですね。

メモ機能が便利

Audible(オーディブル)の場合は、気になった箇所にブックマークをつけられると同時に、自分でメモの入力ができます。この機能がすごく良いです。メモをとる時は一時停止となるので、一言一句の「写し書き」は難しいですが、要点はなんだっけな?と振り返りながらメモがとれます。ちゃんと理解しながら聞き進める上でも、紙の本で落書きしたり線を引いたりするのと同様に、この機能を使った方が良さそうです。

更に、そのメモは一覧で表示可能なので、スマホでそのメモ一覧のキャプチャをとってevernoteに貼り付ければ、自分用のその本のサマリが完成します。

ただ結構めんどくさいです。先ほど紹介した用途で使う限り、基本的には満員電車ではスマホいじりにくいですし、風呂ではそもそもいじりません。走りながら入力できるほど達人ではないので歩きにチェンジしなければなりません。

が、本の要点の振り返りとかは紙の本だと絶対するので、個人的には学びや気付きを得た場合は使った方がいい機能かなと思います。

 

最後に

ということで、引き続き用途に応じてオーディオブックを利用していきたいと思ってます。素敵な用途や、おすすめの書籍があれば教えていただけると嬉しいです。

 

最後まで読了いただきまして、ありがとうございました!

考える力は「自分ごとの課題」✕「意思決定の数」で向上する

考える力とは

僕は日々、考えることが下手だなと思います。30年も生きてきて、考え方について考えるのは少し遅いかもしれませんが、それだけ難しいことなんだと前向きに解釈しています。

考える力とは何でしょうか。いろいろな書物を読む中で、僕が一番しっくりきているのは「意思決定の質を高める」ということです。

不確実性が高い世の中で、様々な問題に対してほとんどの場合、正解はありません。ですが、正解に近い答えを出すことはできます。それを続けることができる人が成功していくのだと思います。

であれば、意思決定の質を高めるための思考力を身に付けたい。本ブログを始めるときに、読書をネタにして強制的に読書量を増やすということを決めたのも、著者の思考プロセスを体験するという意図があったからになります。

実際、ブログを始めたことで読書量は伸びましたし、読書量が伸びたことで、著者の主張を自分に取り込み、自分はどう考えるのか、という自分で考える思考体験も増えました。さらに、それをブログでアウトプットするので、トレーニング方法としてはかなり良いと思っています。

少し軌道にのりつつあるので、ここで「考える癖がついてなかった自分」が少し考えるようになったのはなぜか。そのポイントを整理しておきたいと思います。
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考える力をつけるためには

① 仕事やプライベートにおける何かしらの課題を多く持つ

② 直感的な気づきや違和感、疑問をもつ機会を増やす

③ 行動を決定する

 

上記の3つのプロセスで整理してみます。

最終的には③の意思決定まで進むことが目的になりますが、そのために①と②の「量」をどれだけ増やせるか。これがポイントになります。

 

思考のきっかけを増やそう

まず、課題(①)が多ければ多いほど、気づき(②)の機会というのは強制的に増えます。

例えば、僕が営業部署のマネジャーで、メンバーのモチベーションが低く実績が低迷している状態を想像してみます。そぼ場合、僕はメンバーのモチベーションをあげるにはどうしたらいいのか?という問いが常に頭の隅っこにあるでしょう。この状態で、例えば飲み会に行ったときに同じような境遇の人がいて、「モチベーションはマネジャーが関与することではないよね」という主張した場合、違和感を感じるのか、共感するのか、何かしら立っているアンテナに反応し、一次的な思考体験が得られます。

この総量を増やすことが、③に進む思考を増やす直接的な要因になります。

 

行動まで落とし込もう

そして、次にさらに大切なのが、気づき(②)を行動(③)に転化するという作業。大小関わらず、何かしらの気づきを得たら、最終的に何か行動するというとことまで落とし込まないと、自分の頭の中で終わってしまった「意味のない」ものになります。それではもったいない。

先ほどの例で言うと、「モチベーションはマネジャーが関与することではない」という主張に対して、「確かにそういう見方もあるよな、勉強になりました」というレベルの気づきで終わるのがダメな例です。

そうではなく、なぜ関与する必要はないのか?関与することではないとはどういうことなのか?と思考を進め、最終的な行動まで落とし込む必要があります。

たとえば、「確かにモチベーションは自らコントロールするものだ。でもそれをコントロールしやすくする仕組みは作れるな。例えば、1日の終わりに5分でも1on1の時間をとるとどうだろう」というところまで落とし込めれば、行動まで落とし込めている=意思決定ができているということになります。

もちろん、②がなくても、①から③まで自らの思考だけで進めるケースもあると思います。もしかしたらそのケースが多い人が「考える力が強い」のかもしれません。

 

課題を認識しよう

そうなると、上流にある①課題の総量が多い状態が思考力をつけるには有利ということになります。でも、これって考えてみると当たり前だと思います。

例えば、下記の記事では、「学歴よりも挫折経験の方がパフォーマンスと相関が強かった」と紹介されております。

 

www.huffingtonpost.jp

 

まずわかったことは、Googleでは、「どんな大学を出たか」は入社後のパフォーマンスと相関関係がなかったことがわかりました。
次にわかったのは、「これまでの人生で苦労をしたかどうか」でした。人生の中で、戸惑ったり、脱線したり、事故にあたり、病気になったり、浪人したり、好きな人を失ったり...。
そういった苦労した人たち、挫折した人たちは、会社のなかでパフォーマンスを発揮していました。

 苦労した経験とは見方を変えると、課題が多い状況と捉えることができます。なので、自然と①〜③までのプロセスを経験することが多くなる。その経験が思考力を鍛え、ビジネスでも活躍できる人材になっているのだと思います。

 

ただ、それらは結果論であって、そういった経験をあえて得るにはリスクを伴います。社会に出てからで考えると、起業する、スタートアップに転職する、などがそれに当たるかと思います。

しかし、こうしたリスクをおかさずして課題を多く得られる方法もあります。

それは「目の前の仕事にコミットすること」。とにかく、目の前の仕事に精一杯取り組む。そうすることでそうではない状態と比べて、課題だと思う総量は何倍にもなります。

面白いかどうかではありません。向き合うかどうかです。向き合うことで、あれもこれも解決しなくれはならない、となるはずです。その「あれもこれも」の状態が良いのだと思っており(もちろん優先順位をつけるなどの仕事のメソッドは取り入れた上で)、そうしているうちに勝手に、課題の総量が上がっていくのだと考えています。

 

さらに言えば、その過程の中で、様々な事象をちゃんと「課題」に置き換えること。これは、事象を構造的に捉える力、因数分解する力などロジカルシンキングの部分で担保できると考えています。

 

最後に

今回は僕自身課題感の強い「考える力」について、現時点での理解をまとめてみました。自分で考えて、意思決定する。それにより事業や社会に何かしらのインパクトを与えることを、僕は面白く感じます。

となると、ここをもっと鍛えていかなければならない。そのためには今以上にその機会を増やしていかなければならない。一番サボってはいけない領域だと思います。

 

最後まで読了していただき、ありがとうございました!

なぜ今、「インサイドセールス」が面白いのか?(参考書籍:インサイドセールス 究極の営業術 最小の労力で、ズバ抜けて成果を出す営業組織に変わる)

インサイドセールスはフィールドよりも面白い?

2018年を振り返ると、「インサイドセールス」の面白さを体感した一年となりました。僕自身は製薬企業で5年間フィールドセールスを経験し、今のWEB系会社でフィールド/インサイドどちらも経験している人間です。どちらかというと、フィールド(≒対面)営業の方が得意ですし、その面白さも十分理解しているつもりです。

でも、間違いなく言えるのは、「今、インサイドセールスが面白い」ということです。10年後はわかりません。ではなぜ、今そのように感じているのか。

 

なぜ、「今」面白いのか?

様々なご意見があるとは思いますが、僕は下記3点と捉えています。

  1. インフルエンサーや代表企業が登場し、その魅力を体系立ててアウトプットし「始めている」から
  2. インサイドセールス部隊に向いているツールが充実し「始めている」から
  3. インサイドセールスが仕事として面白いから

順を追って紹介していきます!

 

インサイドセールスが体系化されてきた

インサイドセールスって何?と思う人も多いと思います。インサイドセールスが注目されてきてから、従来の訪問営業や対面営業がフィールドセールスとして括られるようにもなりました。 

なぜそのような分類が必要なのか?インサイドである意義は?その役割は?これらの問いへのアンサーは会社ごとに違うと思いますし、整理したとしてもしきれることはないと思います。

 

リアルイベントの活発化

しかし、近年「インサイドセールス」ってこういうことだよね、こういう役割を担うべきだよね、という議論が公になされるようになってきました。そしてそれを肌で実感する出来事がありました。

2018年12月6日に虎ノ門ヒルズで開催された「インサイドセールスカンファレンス」です。

insidesalesconference.jp

正直、ツイッターやSNSで有益な発言をされる方と直接話せれるかもしれない、と期待を抱いて行ってまいりましたが、とんでもない。会場は大盛況で会場中参加者で埋め尽くされており、一つのパネルディスカッションを視聴するだけでも一苦労。パネラーの方と話す機会は得られませんでしたが、インサイドセールスの時代が来たと来場者誰もが感じたと思います。(↓開催直後のtweetです)

 

専門書の増加

そして、こうした情報はカンファレンスのような一時的なものではなく、ストック情報としてビジネス本も発売されています。

インサイドセールス 究極の営業術 最小の労力で、ズバ抜けて成果を出す営業組織に変わる

インサイドセールス 究極の営業術 最小の労力で、ズバ抜けて成果を出す営業組織に変わる

 

 ↑インサイドセールスの導入・仕組化の実態が、セールスフォース社やユーザベース社の実例をもとに、かなりリアルに記載されてます。僕も同じ立場として、つまづく場面や課題がかなり一致していてとても参考になりましたし、勇気付けられました。

 

インサイドセールスのツールが充実してきた

上記のような盛り上がりも、それを支える技術・ツールの出現が土台にあるのだと思います。(テクノロジーとビジネスは相互作用が強く、僕らもテクノロジーに敏感でなくてはならないといつも思います)

具体的には、オンライン商談ツールのベルフェイス社や、リード管理ツールのマルケト社が代表かと思います。

こうしたツールにより、どの会社もインサイドセールスを検討してから導入するまでの障壁がこれまでと比べて圧倒的に低くなっています。こうして導入会社が増えていくことで、情報交換が頻繁に行われ、さらにその領域が深まっていくのだと思います。それをリアルに体験できて嬉しい。

 

こうした「新しいツールの登場」や「最先端の情報が得られる機会」といったものはまさ”今だけ”のものです。残念ながらすでにファーストペンギンではありませんが、もしかしたら各会社に限定した話ではそれに近い状態かもしれない。周囲もまだ答えを持っているわけではないし、自分の仕事がもしかしたらとても影響力を与える事例になるかもしれない。こういった「今作り上げている感覚」がインサイドセールスを面白くしている大きな要因だと考えています。

 

何が面白いのか?

とはいえ、やっぱりそれ自体の面白さが全てを支えています。

ここでは、先ほど紹介したビジネス書の『インサイドセールス 究極の営業術 最小の労力で、ズバ抜けて成果を出す営業組織に変わる』からの引用も踏まえつつ、下記の2点から整理してみます。

1)利益を生み出す仕事

2)将来性のある仕事

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インサイドセールスは「利益を生み出す仕事」だ

フィールドセールスでは効率が悪い

昨今、フイールドで対応するには効率の悪いビジネスモデルが増えてきました。サブスクリプションモデルなどが代表ですが、「導入・購入」の時だけではなく、「継続利用・追加購入」のアクションの重要性が増してきている中、すべてにアポイント・訪問では効率が悪く営業コストがかかりすぎます。

一方でインサイドセールスは、フィールドが1日4商談程度に限界がある一方で、1日10〜20件の商談の実現を可能にします。こういった背景からインサイドセールス部隊の立ち上げを検討する会社も多いと思います。

そしてその導入により、セールスの生産性が向上し、会社の利益が上がる。今の時代にこういったわかりやすく事業に貢献できそうな仕事はそう多くないのでは?僕はそこに面白さを感じます。

 

マーケティングプロセスとの相性が良い

BtoBの領域では、マーケティングアプローチが主流になってきつつあります。こちらからのアウトバウンドで積極的にお勧めする従来型の営業ではなく、「必要な人に情報を届け、問い合わせをしてもらう仕組みを作ること」をミッションとするアプローチですね。

これを「受注」や「購入」をKGIとするフィールドセールスにそのままパスすると温度感の差分にびっくりしてしまいます(もちろん、それで受注に至るケースも多いですが)。インサイドセールスはそんなマーケとセールスの橋渡しの役割を担うことができます。

リードの見込み度合いが整理されていない状態では、別の問題を生みます。それはリードの関心に噛み合わないセールス活動をする可能性があるということです。例えば、リードは商材に少し関心があり資料が手に入れば満足する段階なのに、具体的な提案に向けて訪問のアポイントを熱心にとりにいくといった具合。

これはマーケからも、セールスからも「ナイス!」と言われる立場であるということ。社内的な承認や評価を得られるということは当然、仕事のやりがいの一つですよね。加えて、そういった評価を得るためにはそれぞれの業務をきちんと理解していなければならない。つまり、セールスの全フローを一番理解しなければならないのはインサイドセールスであるということです。その役割を考えると、セールスやマーケとの会話は必須ですし、むしろインサイドセールスから示唆だしや提言をすることが求められます。

 

このように、深めなければ一定の役割に留まりますが、深めれば事業の深い部分にもアプローチできるのが魅力的なんだと思います。

 

インサイドセールスは「将来性のある仕事」だ

マーケティングスキルが高まる

マーケティングの領域は科学と相性がよく、PDCAが回るのが早く、セールスの領域に比べ進むのが早い。それが魅力でマーケ職を選んでいる人も多いと思いますが、インサイドセールスはマーケとセールスどっちの役割ももっているマルチな領域です。

例えば、現在セールスでマーケティングに興味のある人は、インサイドセールスを経験することで、得意分野を生かしつつ、新しい知識をインプットできます。そんないいとこ取りなキャリアプラン、なかなかないですよね。僕はそこに魅力を感じます。  

 

PDCAが早く、一体感をもった仕事

文字通り、インサイドセールスは社内で業務が完結します。それゆえに、成功・失敗共に、周囲の目につく場所にあります。もちろん、それが嫌だという人が多いのは理解しておりますが、それさえ乗り越えればこれほど早く・多く他者からのフィードバックが得られる環境はありません。

さらに、目指している指標や目標もチームで共有するわけですから、毎日部活のような一体感を産むことが可能です。(しかし、これが相当難しい。チャレンジし続けるという面白さは間違いなくあります)

弊社の中でも、おそらくこれだけ同じ空間で、類似性が高い業務を一緒にするのは珍しい。(中略)実は人と働くことの醍醐味とかダイナミクスが味わいやすくてマネジメント能力が試されるのは、インサイドセールスじゃないかと思っています。

 

リモートワークとの相性が良い

全てインサイドで完結するため、当然フィールドセールスと比較して場所の制約がないというのが大きな違いになります。転勤や出張が当たり前の「営業」という職種に、革命をもたらす可能性があるのは間違ありません。

時代の流れとしても、リモートワークへの注目度の高さは無視できません。リモートワークであるからこそのメリット・デメリットをそれぞれの状況で整理して、チャレンジしてみるのも良いと思いますし、すでに今それができる時代になっています。(弊社でも検討してます)

 

このように、インサイドセールスは「雇用」という意味では拡大していく市場だと思います。なので、その経験を積むことは自分の「市場価値」を高める前向きなキャリア選択だと思いますし、それを高速PDCAを元にどんどん業務をよくしていくことができる。(※これに、マネジャーが優秀であればチームの一体感もついてくるのですが、これは環境によるかも)

それがインサイドセールの仕事の醍醐味だと思います。

 

最後に

本業に関するものなので、結構長くなってしまいました。最後まで目を通していただき、ありがとうございます。

今、インサイドセールスは間違いなく熱い領域です。2019年もどっぷり浸かる予定ですので、みなさんと情報交換できたら嬉しいです。

2019年もどうぞよろしくお願いいたします。